葉加瀬マイ 2018年11月29日号

“危ない金融商品”を生み出した アベノミクス最後の大罪

掲載日時 2016年05月14日 14時00分 [社会] / 掲載号 2016年5月12・19日合併号

 異例のマイナス金利導入発表から3カ月が経過した。日銀(=政府)は証券、保険を含む各金融機関に対し“余った資金を企業への貸し出しや他の投資に回すよう促し、経済の活性化やデフレ脱却につなげよ”と下命。おかげで預貯金の金利も下がり、メガバンク3行の普通預金金利は、今や0.001%だ。10万円を1年間預けて、単純計算で利子はたったの1円である。

 こういうご時世だからこそ気を付けなければならないのが、いわゆる“危ない金融商品”。リスクがないように見えて仕組みが複雑で思わぬ損をしてしまうものや、ローリスク・ハイリターンをかたる詐欺的なものまでさまざま。一例を挙げよう。これは70歳代の男性から国民生活センターに寄せられた相談だ。
 「再生可能エネルギーによる売電事業を行っているという事業者から話を聞いてほしいと電話勧誘され、自宅で話を聞いた。『出資すれば毎月高額配当する』と言われ、申込書に記入し、出資約款等の書面を受け取った。後日、事業者の指定口座に100万円を振り込んだところ、出資証券が届いた。あらためて事業者からもらった書面を読むと、元本保証ではなく、配当も確定したものではないことが分かった。こんなことは事前に聞いておらず、知っていれば出資しなかった。解約して、返金してほしい」
 この種の投資話が非常に増えている。その陰には、アベノミクスの悪影響があるのは間違いない。

 民主党政権下で9000円割れだった日経平均株価が2万円を突破するなど、俗に言う「アベノミクス相場」も3年半が経とうとしている。相場が始まってからの半年間は全面高となったため、どんな株でも買えば誰でも利益を得ることができた。投資熱の高まりとともに、ひと儲けしようとする個人投資家も増えた。スマホの普及によって低迷していた出版業界にも、マネー情報誌や関連書籍の思わぬ“特需”が舞い込んだ。
 金融商品を販売する証券会社や銀行が、そんな大きなビジネスチャンスを逃すはずもなく、業界の雰囲気はイケイケドンドンになった。中堅証券会社の営業マンはこう話す。
 「リーマンショックという冬の時代を過ぎて、春が来た気分でした。40〜50代を含めて若い人はネット売買が主流ですから、われわれが狙うのは60代以上の小金持ち。証券会社は売買手数料ビジネスなので、顧客の現預金をどう金融商品に向けてもらうか、金融商品を買ってもらった後も、どう売買を繰り返してもらうかを考えます。ただ、アベノミクスもよかったのは半年ぐらいで、その後は二極化相場になって、銘柄によって株価の動きが大きく異なるようになりました」

 大手の営業マンの中にも、過剰な勧誘を行ってリスクの高い金融商品を買わせた揚げ句、顧客に損失を与えた例が続出した。
 2年前の報道だが、りそな銀行の20歳代の男性行員が、担当していた顧客から私的に約1億5500万円を集めて外国為替証拠金取引(FX取引)などで運用し、大半を消失させた。同行は、行員が業務外で資金を集めることやFX取引を行うことは認めておらず、金融庁に報告。この行員は自殺していて、顧客から「連絡が取れない」と問い合わせがあって事件が発覚した。

 リスクの高いFXをめぐるトラブルは山のようにあるが、投資信託も往々にしてトラブルの種になる。新規に設定された投資信託や新規募集の債券などは“募集もの商品”と呼ばれ、これらは本部の営業企画サイドから各支店毎に販売量のノルマが決められることがあるという。
 「ノルマはまず、本社から各支店の支店長に下ろされ、続いて各課長に下ります。現場の営業マンには大きなプレッシャーがかかり、このノルマが大きいときは、支店の顧客に広く提案しなければなりません。少し前まではリスクの高い外国通貨建ての投信も活況で、日本の個人投資家向けに新しいファンドが次々設定されました」(前出・営業マン)

 先頃、日銀が発表した統計によると、家計が保有する金融資産総額1741兆円の半分以上が現預金だという。米国は約14%、ユーロ圏では約34%。日本人の資産運用が現預金に大きく偏っているのは明らかだ。
 政府が望むように、この貯蓄が投資に向くことが経済活性化の材料になるのは悪いことではない。しかし、「素人でも簡単に成功できる」状況が終わり、ちょっとした成功体験のせいで爆死する素人投資家が増えるというのもまた事実だ。

 熊本地震の影響もあるのか、日経平均株価は反落と続伸の繰り返し。個人投資家にとって相場の不透明感は増すばかりだ。アベノミクスの柱は大胆な金融緩和だが、マーケットにじゃぶじゃぶと注がれるカネはこの先、どこに向かうのだろうか。


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