森咲智美 2018年11月22日号

本好きリビドー(209)

掲載日時 2018年06月30日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年7月5日号

◎快楽の1冊
『メディアは死んでいた-検証 北朝鮮拉致報道』 阿部雅美 産経新聞出版 1400円(本体価格)

 もう13年ほど前になろうか。その頃所属していた事務所での宴会の席上、たまさか話題が拉致問題に及んだことがあった。
 拉致当時13歳の被害者、横田めぐみさんが「自殺」し、その遺骨と称する代物を北朝鮮側が一方的に押し付けてきたものの、DNA鑑定の結果全くの別人と判明したのが報じられてすぐのこと。小泉訪朝後まだ日も浅い頃合いだったと覚えている。
 よくもぬけぬけと、かくも高速でバレる嘘がつけるものよとひとしきり北朝鮮への非難を口にした筆者に対し、その場で看板女優の李麗仙氏が突如、日本の植民地支配の問題を持ち出し怒鳴り始めた。朝鮮半島統治の是非善悪を問う歴史の議論であるのとは違って、拉致はいま現在、目の前で進行形の誘拐だ。歴史の問題と犯罪行為を同一次元で語るんじゃないと筆者も激昂して猛反論。以来、李麗仙氏と完全な冷戦状態に陥った嫌な記憶が本書を読んでまざまざと甦った。
 しかし彼女に相通じるような言説を、TVやラジオでふりまく文化人が珍しくなかったのもまた事実。曰く強制連行(これとて今日検証の余地が多々あるが)された朝鮮人の過去を思えば拉致はある程度仕方ない、つまりおあいこ的な発想は筆者には到底理解不能。この論法ならイスラエルの人間はいくらでもドイツ人を殺してよいことになりかねないではないか。
 拉致自体の非道さ以上に、著者が'80年にスクープした拉致疑惑が長らく虚報、デマ扱いされ日本国内で大々的に報道されないのに加え、特定の政党・政治家が事件を否定し続け、あまつさえ韓国で逮捕された関係工作員の恩赦請求に署名までしたのは万死に値する。無限に根深いこの問題が解決されぬ限り、国家としての日本など存在しないも同然。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 白木屋の大火災
をご存知の方もいるだろう。昭和7年、東京日本橋のの百貨店・白木屋で火事が発生し、14人が死亡した惨事だ。
 この時、消防が準備した救助ネットに飛び降りて救われた人たちがいた半面、飛ぶ際に衣服がめくれて下半身が露わらになるのをためらい、結果として亡くなった女性がいたと報じられた。この当時の女性はまだ和服姿で、着物の下に下着をはいていなかった。そして、この事件が景気となって、日本人女性の間にパンツが普及していく…。これが白木屋の下着伝説である。
 『パンツが見える。羞恥心の現代史』(新潮社/税込767円)は、その伝説が正しいかを検証することから始まり、実はかつての日本には局部が見えることさえ、それほど恥ずかしいと思わない女性がいたことを解説している。むしろ“股”を凝視されると恥ずかしいという考えが生まれたのは、戦後にスカートが普及し、誰もがパンツをはき始めてからだという。
 かつてはアソコも恥ずかしくなかったのに、布で隠し始めたら、かえってその布が恥ずかしくなる。反対に男は男で、電車の座席に座っている女性のデルタがパンチラしそうになると、局部モロ見えよりミョーに興奮してしまう…。
 なぜ、そんなアベコベなことになってしまったのか。日本女性にとって、下半身を“見られる”という羞恥心は、どのように変化してきたのか…などを極めて真面目に追求した、何ともキテレツかつ愉快な1冊だ。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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