美馬怜子 2018年6月7日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第90回 '94 年以降、最も消費を減らした内閣

掲載日時 2014年12月11日 13時00分 [政治] / 掲載号 2014年12月18日号

 11月21日に衆議院が解散され、2年ぶりとなる年末の選挙戦が始まった。
 与党である自民党は、実績として「日経平均の上昇」を盛んにアピールしているが、株式という金融資産の価格がどれだけ上昇したとしても、それ自体では国民の所得は創出されない。
 所得とは、
 「生産者が働き、生産したモノやサービスという付加価値に、誰かが消費、投資として支出(購入)する」
 というプロセスを経なければ創出されないのだ。
 株式はモノでもサービスでもなく、単なる企業の「資本」だ。企業の資本を意味する証券の価格がどれだけ上昇しても、国民の所得は増えない(証券会社の手数料収入のみ、所得となる)。

 日本経済が首尾よくデフレから脱却し、「需要牽引型」の物価上昇局面に入り、国民の実質賃金が上昇していき、内需が拡大する。さらに、企業の利益が拡大し、日経平均が上昇する。こんなプロセスを経て、株価が上がっているならば、自民党は大いに誇るべきである。
 とはいえ、現実は、金融政策の拡大で円安が進み、株式取引の65%を占める外国人投資家が日本株を買い越し、日経平均が上昇しているに過ぎない。さらに、円安による輸入物価の上昇は、実質賃金を切り下げる方向に機能する。
 需要(名目GDP)が十分に拡大していない中、消費税増税と円安でCPI(消費者物価指数)が上昇したところで、国民が豊かになる(実質賃金が上昇する)わけではないのだ。

 実体経済(所得=需要=生産)が成長していないにもかかわらず、株価のみが上昇するとは、
 「金融経済と実体経済の乖離」
 が発生していることを意味する。
 両者の乖離が行き過ぎると、一般に「バブル」と呼ばれる環境になり、将来的にはバブルが崩壊し、実体経済が大ダメージを被ることになるわけだ。

 上記の事態を避けるためには、株価の上昇に「実体経済の拡大」を追いつかせなければならない。そのために必要なのは、総需要(名目GDP)の創出であり、国民の実質賃金の上昇なのだ。
 そして、現在の日本は「総需要拡大」が可能なリソース(資源)を十分すぎるほど持っている。金融市場に日本円が溢れかえり、長期金利が世界最低水準で推移しているのである。

 日本政府が「国民の安全保障の強化」「耐震化、防災・減災」「生産性の向上」などを目的とした公共投資を拡大し、需要を創出すれば、デフレギャップが埋まり、名目GDPは拡大に転じる。政府が長期的なプロジェクトを提示すれば、土木・建設会社も安心して「人材投資」を始め、公共事業など建設現場における人手不足問題も解決することになる。
 ところが、第二次安倍晋三政権下では株価を押し上げる代償として、実質賃金の下落を引き起こす円安政策が推進され、さらにGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用ポートフォリオ(性格の異なった複数の銘柄へ投資することにより、より安定した収益を上げるための投資の方法)における日本株の割合の目標値が、12%から25%に引き上げられた(同時に、外国株も12%から25%に引き上げられた)。

 今後、為替レートが円高に振れ、外国人投資家が日本株を売り越し始めれば、政府はGPIFを活用し、株価を下支えせざるを得ない。何しろ、日本国民の年金が人質になっているも同然なのだ。
 株価は、金融市場の状況次第で上昇する。日本の場合は、円安になれば外国人投資家が日本株を買い越すため、ほぼ確実に株価が上がる。
 所得創出という「実体経済」の状況がどうであろうとも、「金融経済」の世界にマネーが溢れれば、株や為替(外貨)などの金融商品は値上がりするのだ。
 ところが、株価上昇は実体経済と無関係に起き得るのだが、株価暴落となると、今度は実体経済がダメージを受ける。そもそも、長期に渡り日本経済と国民を苦しめたデフレーションは、土地及び株式の価格暴落というバブル崩壊に端を発しているのだ。
 総選挙の結果が、いかなるものになるか、現時点ではわからない。いずれの政党が政権を握ったとしても、経済政策の舵輪を「実体経済中心」あるいは「実質賃金中心」の方向に回さなければ、日本経済は大嵐の中に突っ込まざるを得ないだろう。

 我が国の実質GDPの成長率は、4〜6月期、7〜9月期と、二期連続でマイナス成長になった。2四半期連続で経済成長率がマイナスになることを、何と表現するか。英語でいう「リセッション」、日本語なら「景気後退」だ。
 しかも、今回のリセッションは、消費税増税により“人為的”に引き起こされたものなのである。
 さらに、民間調査会社の多くは、2014年は一年を通じて「マイナス成長」になるとの予測を発表している。すでにGDPデフレーター(国内総生産算出時の物価指数)もマイナスになってしまっているため、実質のみならず、名目GDPも縮小するだろう。その場合、
 「2014年の税収は、2013年と比較して増えるのか、否か」
 がポイントになってくる。

 とにかく、安倍政権は「増税」をしたわけだ。
 「デフレ期に増税すると、総需要(名目GDP)が抑制され、税収は増えないか、下手をすると減る」
 と、散々に警告してきたにもかかわらず、4月に増税が実施され、実際に名目GDPが縮小を始めている。「増税によりデフレ深刻化、税収減」は、まさに'97年以降の橋本龍太郎政権がたどった悪夢の道だ。
 安倍政権にせよ、自民党にせよ、株価上昇を誇っているような状況ではない。

三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。

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