和地つかさ 2018年9月27日号

本好きリビドー(189)

掲載日時 2018年02月03日 20時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年2月8日号

◎快楽の1冊
『丸屋九兵衛が選ぶ、2パックの決めゼリフ』
 丸屋九兵衛 スペースシャワーブックス 1200円(本体価格)

 いやはや知らなんだ。'96年にラスベガスで狙撃され、いまだ犯人は検挙されぬまま25歳の若さで死に、半ば伝説的な著者によれば半神(デミゴッド)的に語り継がれるヒップホップ界のスーパースター、2パックの名前の由来が、トゥパク・アマルから来ていたとは。
 だいたい“2PAC”と書かれりゃ気付かぬのも無理はない。山本五十六を“YMT56”と表記されたら一瞬「新手のアイドルグループか?」と錯覚してしまうようなもの(違うか)なのはともかく、最近、恩赦で釈放されたペルーのフジモリ元大統領が、20年以上前の在職中に直面したリマの日本大使公邸人質事件をまだご記憶の諸兄も多かろう。あの時立てこもったゲリラ武装組織が名乗っていた“MRTA”、これが「トゥパク・アマル革命運動」を意味する頭文字だったのだ。
 ちなみにトゥパク・アマルとは16世紀にスペインに滅ぼされたインカ帝国最後の皇帝の名で、200年後にその子孫ガブリエルがやはりトゥパク・アマル2世を称し十数万のインディオを率いて大反乱を起こしたことから、西欧白人による植民地支配全体への抵抗の象徴と化したらしい。
 「孫子」やマキャベリの「君主論」を愛読し、芸術系の高校時代はシェイクスピア劇の俳優として将来を嘱望された過去を持つ2パック。本書はそんな彼の遺した数々の言葉をとば口に、現在のアメリカの文化的背景を紐解いてゆく。「25歳で死んでいたら、マルコムⅩはストリート・ハスラーに過ぎなかった。25歳で死んでいたら、マーティン・ルーサー・キングは単なる田舎の牧師だった。25歳で死んでいたら、私は作曲家志望のトランペット奏者だった」と、クインシー・ジョーンズをして言わしめた男は何を成し遂げたか?
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 医学博士の志賀貢氏といえば『男と女のないしょ話』(角川文庫)、『ドクター志賀の大人のH学』(コスモ出版)など、医学をもとにしたハウ・トゥ・セックス本の草分け的存在として知られる。その志賀氏の新著が『世界一しあわせな臨終 その迎え方の秘訣』(メディアソフト/1200円+税)だ。
 寿命100歳が珍しくなくなった日本において、最期の時―“死”をどのように迎えることができれば幸せな人生といえるのか。多くの患者を看取ってきた現役の医師だからこそ語れる、臨終の在り方とは。深い意味をもった言葉の数々が掲載された1冊である。
 一例を挙げよう。「自然の摂理に逆らわずに生きる」「今や『医食住』の時代」「畳の上から旅立とう」「幸せな一生の第一関門は40代からの健康管理」「三食食べて100歳万歳」「酒の肴で睾丸を強くする」など。
 さすがに“性医学”の権威だけあり、老人の性や精力アップの方法も著されているところもうれしい。長寿社会の中で行き場を失くしつつある高齢者たちの生きがいの探し方や健康法を網羅し、意欲的な心と丈夫な身体を持つことこそが、幸せな臨終につながると説いている。
 確かに現在の日本は、長寿が決して幸せとはいえない社会だ。長く生きても家族からは放置され友達もいない、孤独の中で最期を迎える人も少なくない。そうした事態を避けるにはどうしたらいいのか。まだ健康な内に死に方を考えておこうという、含蓄ある提言をぜひ読んでおきたい。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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