葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(191)

掲載日時 2018年02月18日 12時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年2月22日号

◎快楽の1冊
『ビートたけしと北野武』 近藤正高 講談社現代新書 800円(本体価格)

 まったく、ヘタな「文春砲」も数撃ちゃあいいってもんじゃない。たかが不倫ごときを理由にあたら一時代を築いた音楽家を結果的に抹殺してしまうとは何事か。もっとも小室哲哉氏もひ弱といえばあまりにひ弱で、何も泣いて引退表明までせねばならぬ必然性などどこにあろうか。
 こんな時どうしても、比ぶべくもないがやはり思い出してしまうのが'94年のバイク事故直前に、細川ふみえ嬢との交際を追及取材する芸能レポーターの群れに囲まれた際のビートたけし氏の「それがどうしたバカヤロー」である。毅然とか不敵とかをもはや飛び越えて完全に雑魚の集団を呑んだ巨鯨かと見紛うばかりの態度で、その威風堂々っぷりにむしろ天晴れ快哉を叫んだ人間の方が多かったのではないか。ふた言めには「コンプライアンス」が連発されるご時世に鵜の目鷹の目で散々見張って炙り出して叩きに叩いておいて、今更“勝新みたいに豪快に遊べる破天荒な芸人が少なくなった”云々だと? 一体どの面下げて言えるのか。少なくさせたのは誰なのか?
 連続強姦殺人の大久保清、寸又峡にライフル銃で立て籠もった金嬉老、三億円事件の黒幕から豊田商事の永野会長を衆人環視で刺した襲撃犯、果ては「イエスの方舟」の千石剛賢にエホバの証人輸血拒否事件の父親役に至るまで、戦後の昭和を騒然とさせた物語の主役たちをことごとく演じてきたビートたけし=北野武。本書はこの、恐らく日本芸能史上不世出の人物を、彼の持つ強烈な二面性を突破口かつ多角的に論じて出色の快著である。スーパースターの“スター”=星とは、“ホシ”=犯人でもあるのに気付くと版元が講談社なのも何かしら因縁めいたものを感じること僅か。
(黒椿椿十郎/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 女性向けの人生相談本『お坊さん、「女子の煩悩」どうしたら解決できますか?』(青春出版社/1280円+税)。
 オヤジが圧倒的に多い週刊実話読者に、なぜこの本を紹介するかというと、貴殿の奥さん(または彼女)や部下の女性は、人知れずこうした悩みを抱えているということを、理解できる1冊だからだ。
 取り上げているテーマは恋愛、結婚、出産・子育て、おカネ、隣人関係など。こうした悩み、奥さんや恋人が男に相談することは稀である。理由は相談したところで親身になって答えてくれないから…。そう、男はてんでアテにされていないのだ。
 確かに一読すると、「そんなことで女性は悩んでいるの?」という問題ばかり。
 「女友達との関係がうまくいきません」と打ち明けられたら、男だったら「じゃあ会わなきゃイイじゃん」
 「交際中の男性とうまくいっていない」は、「別れちゃえばイイ」…。男ならこう答える。
 だが、それでは女性たちには、何ら解決策にならないのだ。では、どう回答すればいいのか…を“寺カフェ”と呼ばれるお寺直営の喫茶店で人生相談に乗っている、僧侶歴40年の浄土真宗本願寺派のお坊さんが、仏教の教義を交え、諭すように助言してくれる。
 寺カフェとは、換言すれば現代の“駆け込み寺”のようなものだろう。そこで多くの女性の悩みに接してきた僧侶のひと言ひと言を、受け売りでもいいからそのまま女性に語れば、男としての株が上がるかも…。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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