新型コロナウイルスと分裂抗争「予期せぬ敵との闘い」

社会・2020/04/10 20:00 / 掲載号 2020年4月23日号
新型コロナウイルスと分裂抗争「予期せぬ敵との闘い」

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 神戸山口組から死者が相次いだ昨年とは打って変わって、年が明けて以降は静けさが漂っている。特定抗争指定の警戒区域内にある三重県桑名市の髙山清司若頭の自宅に、銃弾が撃ち込まれる事件こそ発生したが、それに対する報復は現在まで起きていない。

 しかし、警察当局は抗争のさらなる激化を危惧し、取り締まりを強化。六代目山口組と神戸山口組への逮捕劇を繰り広げ、3月25日には大阪府警が六代目山口組・髙野永次幹部(三代目織田組組長=大阪中央)を大阪府暴排条例違反の容疑で逮捕した。暴排条例によって組事務所の開設が禁じられた東大阪市内の児童福祉施設から、100メートルの場所に組事務所を開設したというものだった。

「30日には大阪暴追センターが、新設されたとする事務所に対して、使用差し止めの仮処分を大阪地裁に申し立てました。まだ勾留中にもかかわらず、あまりにも早い段階で申し立てがあったのは、逮捕前から府警と連携していたからでしょう」(全国紙社会部記者)

 対立抗争を繰り広げる両山口組の弱体化を狙っているのは明らかで、その“成果”はハッキリ数字として表れていた。

 4月、警察庁は主要団体の構成員数を発表。まとめによると、準構成員を含まない正規の構成員数は、六代目山口組が前年比300人減で4100人に、神戸山口組が200人減で1500人となった。また、絆會に関しては70人減の300人とされた。

 さらに、4月3日には特定抗争指定の3カ月間延長が官報で公示され、警戒区域内での規制が続いている。

「事件が起きていないため、当局は特定抗争指定による抑止効果があったとみているだろう。しかし、現実には別の問題が発生している」(山口組ウオッチャー)

 その問題とは、新型コロナウイルスの感染拡大にほかならないという。

「3月に山口組とは別の関東組織から感染者が確認され、重症化したと聞く。実際、入院中の当人と見られる画像がSNSで広まった。入れ墨のある屈強な男性が人工呼吸器をつけてベッドに横たわっている画像で、感染の恐ろしさを伝えるため、油断しないでほしいという意味で、あえて拡散されたとみられた」(同)

 六代目山口組の関東ブロック会議が都内で行われた際も、ほとんどの組員がマスクを着用し、手の消毒を行っていた。しかし、4月に入り、事態は深刻化。都内の感染者数が1日で100人を超えるようになった。

「その矢先に、六代目山口組内からも新型コロナウイルスの感染者が出たと聞く。関東ではなかったが、ブロック通達で回り、感染への警戒が呼び掛けられたそうだ」(他団体関係者)

 感染拡大が危ぶまれる地域の直系組織では、組事務所を閉鎖するところも出ているという。

「事務所に組員たちが詰めることで、リスクに繋がりかねない。自宅待機によって防止し、今は収まるのを待つしかないだろう。抗争の最中ではあるが、感染によって命を落としては元も子もないからね」(同)

 六代目山口組の“指揮官”である髙山若頭も、早い段階から移動の際には高性能マスクを着用するなど、新型コロナウイルスの対策を行っていたとみられる。

「愛知県での3月の中部ブロック会議の席に、本来ならば出席しない髙山若頭の姿があったそうだ。結束を強めることが目的だったと思われ、他のブロック会議への参加も噂されていた。けど、現状では中止せざるを得ないだろう」(同)

 また、ウイルスの感染拡大は、分裂抗争にも影響を与えかねないという。

「世界的、国家的行事に水を差さない、一般社会に迷惑を掛けないという意識があるためか、その最中には事を起こさない傾向がみられる」(業界ジャーナリスト)

 平成28年に神戸山口組・池田組(池田孝志組長=岡山)の髙木昇若頭が、三代目弘道会(竹内照明会長=愛知)系組員に射殺されたのは、各国首脳が一堂に会した伊勢志摩サミットの終了直後だった。

 さらに、昨年4月には天皇退位を約2週間後に控えたタイミングで、神戸側の中核組織である五代目山健組(中田浩司組長=兵庫神戸)・與則和若頭が、別の弘道会系組員に刺される事件が発生した。

「今は日本全国が新型コロナウイルスに怯え、マスクの品薄などパニック状態が続いている。こうした中で抗争事件など起こせば、より社会の混乱を招くことになり、ヤクザ間の対立だけでは済まなくなる可能性もある。それに、組織にとっても感染リスクは他人事ではないはずだ」(同)

 神戸山口組のある直系組織では、近隣住民に使い捨てマスクを配布するなどしたという。山口組は過去にもボランティア実績があり、六代目山口組も水面下で何らかの支援活動を行っていると思われる。

「新型コロナウイルスの蔓延によって“休戦状態”になったのかもしれないが、双方とも、ただ時間が過ぎるのを待っているだけではないはずだ。感染拡大が収まり、社会生活が通常に戻ったとき、行動に移せるよう備えているのではないか。この分裂を終わらせたい六代目山口組は最終攻勢に、神戸山口組は存続を懸けて、抗争が再燃することも予想される」(同)

 4月6日には安倍総理大臣が新型コロナウイルスの蔓延によって、「緊急事態宣言を出す」と明言。指定する地域には東京、埼玉、千葉、神奈川、福岡の他に、分裂抗争の激戦区である大阪、兵庫も含まれる。期間は約1カ月とされ、六代目山口組、神戸山口組の対立にも変化をもたらすことになりそうだ。

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