菜乃花 2018年10月04日号

話題の1冊 著者インタビュー リチャード・ロイド・パリー 『黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実』 早川書房 2,300円(本体価格)

掲載日時 2015年09月12日 17時00分 [エンタメ] / 掲載号 2015年9月17日号

 −−2000年に東京で行方不明になったイギリス人ホステスのルーシー・ブラックマンさんが、バラバラ死体で発見された事件をテーマにされています。'12年に出された英語版の翻訳ですね。

 パリー 日本語版の出版が決まるまでには時間がかかりました。事件当時、犯人とされた織原城二が、多くのメディアに名誉毀損の損害賠償訴訟を起こしていたことと、事件が古いことが理由です。

 −−織原は、ルーシーさん殺害については無罪でしたが、ルーシーさん以外の9人の女性に対する準強姦罪や強制わいせつ罪、準強姦致死罪で無期懲役刑が確定して服役中です。その意味では、“終わった事件”と言えるかもしれません。

 パリー 当時から取材をしていて、事件には織原の特異な性癖以外にも、たくさんの複雑な要素があることに気付きました。ルーシーと織原、その家族たちの事情のほか、「在日」や「水商売」、「ヤクザ」など、私たち“ガイジン”には分かりにくい日本の現実ですね。これらを踏まえて事件を描くには、一冊の本にまとめることが必要だと感じたのです。

 −−在日で帰化した織原のルーツについても書かれています。

 パリー 織原は、なぜあのような事件を起こしたのか。生い立ちから調べて、「在日」が一般的な移民とは異なる存在であることを知りました。もちろん“在日だから”事件を起こしたわけではありませんが、織原という謎の多い人間を知るためには必要な作業でした。

 −−資産家の織原から1億円の「お悔やみ金」を受け取り、がめついと批判されていたルーシーさんの父親や、変死したとされる織原の父親についても書かれています。

 パリー 取材を通じて、人間とは、とても複雑な存在であることにあらためて気付かされました。確かにルーシーの父は織原から多額の金を受け取りましたが、100%の悪人というわけでもなく、むしろ彼女の家族は愛に溢れています。一方で、織原の父は織原本人以上にミステリアスで興味深い存在でした。
 また、ルーシーやホステスたちがドラッグを使っていたという事実も書いていますが、イギリスはドラッグに関しては日本ほど厳しくありません。若者がたまにドラッグを使うことについては寛容であり、ルーシーにも罪悪感はなかったでしょう。本書では、そうした人間の複雑さや、“影の部分”に迫ることができたと思っています。
(文中一部敬称略/聞き手:吉原美姫)

リチャード・ロイド・パリー
1969年イギリス生まれ。英紙『ザ・タイムズ』アジア編集長、東京支局長。東京を拠点にアジア約30カ国・地域を取材している。

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