菜乃花 2018年10月04日号

高齢者狙い 全国で暗躍する詐欺一味「地面師」に気をつけろ!

掲載日時 2017年01月18日 16時00分 [事件] / 掲載号 2017年1月26日号

 昨年3月12日から捜索願が出ていた高橋礼子さん(当時59歳)が、10月19日に白骨死体となって発見された。場所は失踪直後と8月にも警察が捜索したはずの東京・港区新橋5丁目の自宅(約182平方メートル)と隣家との45センチの隙間だ。

 夏季を挟んだ約7カ月もの間、近所の住民は誰も気付かなかった…。この『新橋資産家女性失踪事件』は『不審死事件』に切り替えられ、捜査は継続中だ。
 「高橋さんは自宅以外に新橋4丁目のマッカーサー道路(環状2号線の一部)沿いにも約170平方メートルを所有しており、その辺りの区画の角地に位置していました。もし転売に成功すれば高層ビル、ホテルが建設可能であることから、多くの不動産業者が接触したがった有名人だったのです。身寄りはなく、人付き合いも全くせず、アル中。しかも自宅での生活を嫌ってホテル住まい。地面師にとっては格好のターゲットでしたから、失踪当時からもしや…と思われていたのです」(全国紙社会部記者)

 そう、この事件は“地面師”と言われる詐欺師による関与が濃厚なのだ。
 「高橋さんは、失踪から1カ月後の昨年4月に土地の所有権をそのままにして、大田区大森のワンルームマンションに引っ越しています。新橋に自宅も貸家もある人が引っ越す理由は見当たらない。考えられるのは、地面師が高橋さんに成り済ました同じ年頃の女性を用意し、印鑑証明の新規取得と、それを利用した委任状などの発行を行って所有不動産を売買した不動産詐取の疑いが濃厚なのです」(事件ライター)

 地面師とは不動産業界に巣食うワルたちのことだ。元不動産業者が多く、関連法にも詳しい。土地所有者の知らない間に運転免許証など本人確認できるものを偽造し、本人に成り済まして印鑑証明や住民票などを取得し、土地を売り飛ばす連中である。実際、ニセ高橋が賃貸契約を結ぶ際に提示したのは“高橋礼子”名の偽造パスポートだった。
 「不動産取引における必要最低限の書類は、(1)不動産の権利書、(2)固定資産(土地・家屋)評価証明書、(3)印鑑登録証、(4)本人確認ができるものの四つです。これらを偽造した上でチームを組んで収奪する。仕事の“入口”で孤独な資産家を狙い、最終買い取り者である“出口”に大手企業を用意し、間に“ニンベン”と呼ばれる偽造屋、事件屋などの裏稼業人と組み、時にカネで転ぶ弁護士や司法書士を配する。権利証などは自治体、年代によって使用する紙質が違うので、それに応じたものを使って精巧に作成するので、役所なんぞはイチコロです」(詐欺に詳しいジャーナリスト)
 (4)については、過去の事件でニセの写真付き住民基本台帳カード(住基カード)が使われたケースもある。

 ニセ高橋が最初の所有権移転契約を行った昨年4月28日に、本人確認を行った司法書士は、使われた偽造パスポートを見抜けなかったのだろうか。
 「地面師犯罪摘発の難しさは、実行犯はともかく、どこまで共犯かハッキリしないことだ。マイナンバー制度が本格運用されたところで、ニセ物を使われ、グルの疑いのある司法書士や弁護士に突き付けても、『私は騙されたんだ』と反論されればどうしようもない」(捜査関係者)

 不動産業界には、超一等地にあるものの権利関係が複雑で、反社会勢力や地面師が関与する著名物件が数多く存在する。過去に名うてのプロが物件をまとめ、一級品に仕上げようと何度もチャレンジしたが、反社が資金移動に動いた瞬間、警察に摘発されるので撤退するか放置してきた。
 こうした物件は、地面師が登記簿に顔を出すから価値が下がる。それでも、まとめればもうけは大きいということで、新たな業者が参入する。だが、まとまりかかると妨害者がどこからともなく登場し、水泡に帰し、また価値は下がって、最終購入を意図した大手スポンサーが泣きを見るという繰り返しだ。過去、有名なところでは、サラ金大手だった『武富士』創業者、故武井保雄元会長の東京・杉並区の自宅の架空売却話と偽造書類で三菱地所を騙し、手付金名目で約1億800万円の小切手が詐取された事件や、東京・中央区築地4丁目の『銀座中央ビル』を松竹が買うとした偽造買い付け証明が出回った一件など枚挙にいとまがない。

 こんな地面師グループからあぶれた連中が、アベノミクス効果による不動産バブルに便乗、空き家ばかりか地方の一戸建てを狙って各所を荒らし回っている。
 「昭和20年代以前に生まれた高齢者層は、持ち家率が高く貯蓄もある。その上、子供はすでに独立しているので地面師の格好のターゲットになる可能性があります。オレオレ詐欺を見るまでもなく、この世代は人を疑うことに罪悪感を持つことも詐欺師にとって都合がいい。契約書類自体にもアレルギーがあり、多くはその文面を細かく確認しない傾向がある。一方で、1960年代から80年代に全盛期だった、いわゆる原野商法に騙された人々もこの世代に達しており、当時の騙された人の名簿は詐欺師から別の詐欺師の手に渡っていることを当局でも把握しています。名簿をもとに、二度騙されることもあるので注意が必要でしょう」(前出のジャーナリスト)

 しばらくぶりに連絡してみたら、老いた親が住む実家の売却話が進んでいた…。こんなときは事の真贋を早急に確かめた方がいい。

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