RaMu 2018年12月27日号

本好きリビドー(228)

掲載日時 2018年11月14日 15時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年11月22日号

快楽の1冊
『昼夜日記』 坪内祐三 本の雑誌社 2000円(本体価格)

★昼の読書と夜の酒、2誌の好評連載が合体
 某月某日
『本の雑誌』と『小説現代』でそれぞれ連載の「読書日記」と「酒中日記」が合体した坪内祐三氏の新刊『昼夜日記』を書店で発見。即購入。いきなり38ページでドイツ文学者の山下肇(岩波文庫で読めるエッカーマン『ゲーテとの対話』を翻訳した人)に養子に行った弟がいて、その名が「三浦大四郎」とあり驚く。現在の池袋、新文芸坐の前身にあたる人世坐の主にして別の顔は作家の三角寛ではないか。“ゲーテ・名画座・サンカ研究”なんて落語の三題噺じみたつながりだ。
“『すべからく』や『輩出』を間違って使う人たちは、自分の文章を偉そうに見せたがる”(51ページ)の一節に思わず背筋が寒い。気を付けなくっちゃ。

 某月某日
『わくわく大相撲ガイド』のアンケートで好きな音楽を聞かれて、エミネムだのEXILEだのと答える他の力士を尻目に稀勢の里「浪曲が好きです」(97ページ)。
 今後、断固さらに彼を応援することを決意。

 某月某日
 その昔、文壇関係者で著名人が亡くなると葬儀に現れる有名な香典泥棒で山本ハルという婆さんがいた話(196ページ)が面白い。遂には彼女が葬式にやって来るようになれば、それだけ故人が大物である証といわれたと聞くと余計おかしい。してみればビートたけし氏の数多の著作で知られる、“彼に小遣いをせびられるようになれば芸人として一人前、間違いなく売れる”と噂されたかつての浅草の名物物乞い、キヨシのごとき存在が文学方面にもいた訳か?
 ちなみに、神藏美子氏の写真文集「たまもの」に目を通した人間なら、194ページのさりげない記述にヒリッとするかも。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 タイトルは『日本の結界 陰陽師が明かす秘密の地図帳』(駒草出版/1400円+税)、著者は安倍成道氏。

 察しのいい方は、著者の氏名が「安倍」であることに着目するだろう。そう、歴史上名高い陰陽師・安倍晴明の血を引く方である。つまり現代を生きる陰陽師の継承者だ。

 陰陽師が操る術は、1000を超えるという。中でも、特に重要なのが「結界」。

 結界とは何か? 詳しくは本書に譲るが、人間世界と異界とを「区切る」ものと考えればいいらしい。何を区切るかというと、魑魅魍魎の魔物ではない。神の住む領域と人間とを区切ろうとしたという。神の怒りは、人間に災いを招くものでもあったからだ。

 そして、その区切りとなっているのが、我々の日常生活に密着している「神社」だとか…。

 本書は日本中の津々浦々にある神社を中心に、関東・近畿・中部・東北などエリア別結界を地図付きで解説、日本が霊的なバリアで囲まれた神秘的な国であることを解き明かす。

 単なる迷信と思うなかれ。実は現在の日本人も、知らず知らず結界という信仰を踏襲して生きている。例えば、箸置きは食事と人間を区切る一つの結界だというのだ。食事とは本来は神からの授かり物であり、箸置きから箸を取って手にすることで、初めて人間のものとなるからだ。

 日本人とは、古から存在する結界の中で暮らしているのかもしれない。そう思うと、無視できない1冊である。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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