菜乃花 2018年10月04日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 全面服従はイジメを加速

掲載日時 2018年04月13日 08時00分 [政治] / 掲載号 2018年4月19日号

 3月23日、米国が鉄鋼やアルミに新たな関税を課す措置を発動させた。輸入品が米国の国内産業を脅かしている現状が、米国の安全保障の脅威になっているというのが理由だ。鉄鋼には25%、アルミ製品には10%の関税がかけられる。
 ただし、ホワイトハウスは、北米自由貿易協定を結んでいるカナダとメキシコに加え、EU、豪州、ブラジル、アルゼンチン、韓国を当面、関税の対象外とした。ところが、日本だけは、関税の対象になったのだ。
 米国の鉄鋼輸入に占める日本の割合は5%にすぎず、しかも、日本から米国に輸出されているのは、鉄道のレールや自動車用の特殊鋼など、米国の鉄鋼業が生産していない品目が大部分を占めるため、日本に大きな影響はないとみられる。しかし、問題は、日本が適用除外にならなかったという事実のほうだ。

 もともと、日本政府は楽観していたようだ。日本は最も忠実な同盟国であり、日本から鉄鋼を調達することは、米国の安全保障に何ら脅威を与えるものではないからだ。
 しかし、日本は米国にとって、EUや韓国以下の存在だった。それは、なぜか。私は、日本が米国にとって単なる都合のよい国になっているということだと思う。
 例えばEUは、米国が関税をかければ断固たる対抗措置を採ると宣言した。ところが日本は、この期に及んでも、報復措置どころか、「遺憾である」とのコメントを出すにとどまっているのだ。私自身、中学校までイジメを受けてきたのでよく分かるのだが、イジメは、抵抗しなければエスカレートするばかりなのだ。

 中国はそのことがよく分かっているので、今回の米国の新たな関税に対して、128品目の米国製品に15〜25%の報復関税を課すことを表明している。
 一方の米国は、中国に進出した米国企業から中国が技術を盗んでいると主張して、6.3兆円分の中国製品に輸入関税を課す通商法301条の措置を新たに発表した。関税の引き上げ合戦による保護主義が一気に高まったのだ。

 実は、同じようなことが1930年代に起きている。1929年のニューヨーク株式市場の暴落を端緒とした世界恐慌のあと、世界は一気に保護主義に突き進んだ。その結果、世界貿易は半減し、世界不況が長引くことになった。
 しかも、生活が困窮するなかで、世界は強いリーダーを求めた。そして、ヒトラーやムッソリーニなどの独裁者の台頭を許し、その支配を終わらせるためには、第二次世界大戦という大変な殺戮と財産の破壊が必要となったのだ。

 私は、いまの世界情勢が当時と重なってきていると思う。北朝鮮は言うに及ばず、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平主席、トルコのエルドアン大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領など、独裁者が国民の圧倒的支持を得て、強権を発動するようになっている。
 米国のトランプ大統領も、自分と意見の異なるスタッフを次々に解任するなど、独裁的な政治手法は似たり寄ったりだ。独裁者が強大な権力を掌握すると、他国とのトラブルがあったときに戦争が起きやすくなる。そうなったら、国民生活が破壊される。日本政府がいまやるべきことは、米国をいさめることだろう。

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