菜乃花 2018年10月04日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 ★私的に「砂の器」超え! 必見です 『愛しのアイリーン』

掲載日時 2018年08月31日 15時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年9月6日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 ★私的に「砂の器」超え! 必見です 『愛しのアイリーン』
(C)2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ

 実は正直、まったく期待していなかったんです。
 ところが、見終わった後は「実にスケールの大きな映画を見てしまった…」と、心がしびれるような余韻を感じました。まったくもって嬉しい裏切りです。

 ネタばれになるので詳しく説明はできませんけれども、ラストあたり、嫁のアイリーンが義母を背負って雪山を歩くシーンを見ていて、“『砂の器』を超えたか!?”と思わされたほどです。
 ただ、B級感満載の、主人公2人がパチンコ玉にうずもれているポスターでは、本作のスケール感はおそらく伝わらないでしょう。
 しかも、テレビの地上波での放映は絶対に無理な内容です。どうやったら少しでも多くの方に見てもらえるだろうかと、勝手にヤキモキしてしまいました。
 それで、テレビ番組の収録で定期的にお目にかかる某映画評論家に「愛しのアイリーン、ご覧になりました? まだでしたら、ぜひ!」と思わずプッシュしてしまいました。
 主人公を演じる安田顕をはじめ、木野花、伊勢谷友介、品川徹など、芸達者な役者を揃えていますが、何といっても秀逸なのはフィリピン妻アイリーンを演じるナッツ・シトイです。“これは素なんじゃないか?”と思えるほど、屈託のない愛らしい笑顔と、ゴムまりのように弾む小柄なボディー。
 42歳まで童貞で、愛することに不器用すぎる主人公岩男が、気持ちとは裏腹にアイリーンをないがしろにするので、「ナゼ、モットヤサシクシテクレナイノ?」と、アイリーンが涙ながらに訴えるシーンでは、見ているこっちももう半端なく感情移入してしまいました。

 現実問題として、嫁不足が深刻な日本の農山村では、フィリピンをはじめ東南アジア圏から「嫁調達」することは、今や常態化しているようです。
 せっかく、はるばる日本に来られたのだから、幸せになっていただきたいと思いますが、実際には簡単なことではないようです。「夫に逃げられ、仕方なく子連れで帰国する」という哀しい話もよく耳にします。
 ただ、ここにきて朗報と言えるのは、この7月の大相撲名古屋場所で初優勝した御獄海。彼のお母さんはフィリピン出身の方ですね。他には大関の高安もそうです。2人とも、お母さんのご苦労がやっと報われる大出世ですね。
 自分はフィリピンバブには行くことはないんですけども、遠い昔、まだ独身の頃に知り合いになったマレーシア出身の「ココちゃん」という女の子を、この映画を見てふと思い出しました。ココちゃん、今、どこでどうしているかなぁ。

画像提供元:(C)2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ
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■『愛しのアイリーン』監督/吉田恵輔 出演/安田顕、ナッツ・シトイ、河井青葉、福士誠治、品川徹、田中要次、伊勢谷友介、木野花 配給/スターサンズ 9月14日(金)TOHOシネマズ シャンテ他にて全国ロードショー。■寒村の地。42歳まで恋愛を知らず独身でいた岩男(安田顕)が久しぶりに実家に帰省する。しかしその日は、死んだことを知らなかった父親の葬儀中。しかも岩男は、フィリピンで買って来た嫁、アイリーン(ナッツ・シトイ)を連れていた。岩男に無邪気にまとわりつくアイリーン。ざわつき始めた参列者たちの背後から現れたのは、ライフルを構えた喪服姿の母親ツル(木野花)だった。

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やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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