RaMu 2018年12月27日号

自覚症状なしなので発見困難 “糖尿病からの膵臓がん”の脅威

掲載日時 2018年02月10日 08時00分 [健康] / 掲載号 2018年2月15日号

 プロ野球中日ドラゴンズのエースとして活躍し、楽天ゴールデンイーグルスを念願の日本一へと導いた、星野仙一さんが膵臓がんで死去したのは1月4日(享年70)。
 膵臓がんの5年生存率は、ステージ1で40%。胃がんや大腸がんの同ステージの生存率はほぼ100%のため、その恐ろしさは見て取れる。
 星野さんのがんが判明したのは、2年前の'16年7月と言われているが、急性膵炎を発症して受診した際に発覚したという。その後、闘病を続け、昨年11月28日には自らの殿堂入りを記念するパーティーで元気そうな姿を見せていたが、12月に入ってから病状が悪化、死に至ったという。
 「難治がんと言われる膵臓がんですが、見逃せないリスク因子がある。それは、糖尿病です。星野さんも長年、糖尿病に苦しんでいたようで、その影響が少なからずあると思われます。日本で国民病とも言える糖尿病を患っている人は、そもそもがんになりやすく、中でも、膵臓がんになりやすいことが分かっているのです」(健康ライター)

 5年ほど前、日本糖尿病学会と日本癌学会による「糖尿病と癌に関する合同委員会報告会」が開かれた。その発表の一つに、35歳以上の男女約33万6000人を10年間追跡し、そのうち、がんを発症した約3万3000人を対象に糖尿病の有無と発がん率を分析したものがある。
 「その結果によれば、糖尿病の人は、そうではない人に比べ、がんのリスクが2割高いことが判明したという。それをがん別の発症リスクで見てみると、膵臓と肝臓が約2倍、大腸が約1.4倍だったのです」(同)

 ある放射線医師は、糖尿病と膵臓がんの関係について、こう説明する。
 「糖尿病で高血糖状態になると、血糖値を下げるためにインスリンの血中濃度が高くなる。このインスリンには、がん細胞の増殖を促す作用もあるのです。そのため糖尿病の人はがんになりやすく、中でも、インスリンを分泌する膵臓やブドウ糖の“倉庫”ともいうべき肝臓にがんができると、糖尿病の人ほどインスリンの悪影響を受けやすいと考えられます。加えて、糖尿病を助長させることから、酒量の多い人や喫煙する人も危ないと言える。膵臓がんは、決して他人事ではないのです」
 日本糖尿病学会によれば、糖尿病の患者数は推定1000万人で、予備軍を含めると2000万人にも上る。このうち糖尿病が疑われる人の4割がほとんど治療を受けていないと言われるだけに、対策の点でも大きな問題だ。

 また、膵臓がんは早期発見が難しく、悪性度も高い。しかも、日本における発症率だけを見れば、胃がんや肺がんの方が上回るが、これらは定期的に検診を受ければ早期発見が比較的容易であり、適切な治療を受ければ生存率も高い。一方で、膵臓がんは初期症状が乏しい上に、厚生労働省の定めるがん検診にも含まれていないことが、早期発見をさらに難しくしているのだという。
 「膵臓がんの早期発見が難しいと言われるのは、その一つの原因に症状が出にくいことがあります。もう一つは、膵臓が非常に小さい臓器で、腫瘍も2センチ未満であることと、お腹の奥深くにある後腹膜臓器であることが挙げられます」(同)

 また、膵臓がんはまだ腫瘍が小さいうちから周囲に広がりやすく、最初から肝転移や肺に転移した状態で発見されることが多いのだ。
 「そのことは、膵臓が他の内臓組織と複雑につながっていることが一因とされています。腕のいい医師が細心の注意を払って手術をしても、すべてのがん細胞を取り切ることは簡単ではない。術後も再発予防の目的で、抗がん剤治療や放射線療法が用いられるのは、そうした理由もある」(同)

 東京労災病院放射線科の担当医は、次のように説明する。
 「がんの転移は、血液の流れに乗って移動する血行性転移と、リンパ液に乗って移動するリンパ行性転移の二つがあります。膵臓の場合、臓器自体のサイズが小さいことと、周囲に太い血管が通っていることなどから、遠隔転移することの多いがんと言われます。特に、膵臓から出た血液が最初に向かう肝臓への転移が、最も多いと見られている。もちろん、隣接している胃への転移も少なくありませんが、逆に胃がんの膵臓への転移や、脳、骨などへの転移の危険性も高い。もし転移が見つかった場合は、がん細胞がすでに血液やリンパ液などから全身を巡っていると考えられます。そのため、手術は基本的には行わず、抗がん剤と放射線治療、緩和ケアなどが中心となります」

 膵臓がんと糖尿病が最も関係が深いと前述したが、糖尿病の予防を改めておさらいしておこう。
 管理栄養士の林康子氏は、こうアドバイスする。
 「基本的には、食生活をしっかりと見直すことです。朝・昼・晩はきちんと食べて、間食は控えること。食事はカロリーを抑え、外食派は和食を意識する。野菜や海藻、玄米、麦ご飯、さらに植物繊維を含む食材を積極的に摂ることも大事です。コーヒーや紅茶を飲む際も、砂糖の代わりに人工甘味料を使うなど、体にとってなるべくストレスにならない食生活を継続していくことです。もちろん、糖尿病予備軍によく見られる肥満や運動不足も、改善すべきです」

 昨年7月に亡くなった昭和の大横綱千代の富士も、もともと糖尿病で、元気だった頃は強い洋酒を好む酒豪としても知られていたが、最後は膵臓がんで亡くなっている。
 「糖尿病を患う期間が長引くにつれ、膵臓がんのリスクが増加する。60歳以上の死亡者が9割を占め、早期発見が難しい膵臓がんは、とにかく予防が第一になってきます。そのカギを握る糖尿病は、予備軍を含め見て見ぬふりをしてはならない。糖尿病の3大合併症は神経障害、網膜症、腎症ですが、専門家の間では膵臓がんを第4の合併症に含めてもいいのでは、という意見もあるのです」(内科医)

 がんは、どんなに体が丈夫だと自負する人でも、心をたちまち弱くしてしまう。後悔しないためにも、まずは糖尿病の予防を心掛けよう。

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