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突然死の影に“静かな殺し屋” 大動脈瘤破裂の兆候と予防策

掲載日時 2017年12月16日 10時00分 [健康] / 掲載号 2017年12月21日号

 自覚症状が少ないため“静かな殺し屋”とも言われる大動脈瘤。寒い季節になると発症件率が上がると言われる病気だ。

 さる11月16日夜、アニメ『それいけ! アンパンマン』(日本テレビ系)のドキンちゃん役などを担当する声優、鶴ひろみさんが急死した(享年57歳)。東京中央区の首都高速に駐車した車の運転席で意識不明の状態で発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。正式な病名は「大動脈瘤解離」で、この病気で亡くなる人のほとんどが“突然死”と言われるものだ。
 発見法は定期的な検査が基本となるが、くしゃみや咳などの圧力で血管が膨らんでできた“こぶ”が破れるなど、ちょっとした体調変化で気づく場合もあるとされる。

 医学博士の米山公啓氏はこう言う。
 「血管の“こぶ”は、50歳代から急激に増え始めます。日本国内での正確な数字は不明ですが、海外では60歳以上の男性の5%以上が抱えるとの報告もあります。心臓から伸びた大動脈は内膜と中膜、外膜の3層構造のチューブ状ですが、何らかの理由で内膜が裂け血液が中膜に入り込んでしまい、両方の膜が解離する。さらに血液が流入することで外膜がこぶ状に盛り上がり、大動脈瘤となって破裂するというものです」

 米山氏によれば、即死するケースとしては、心臓から上に伸びた部分の大動脈瘤が破裂し、頸動脈に血流が行かなくなると即死することが多く、大動脈瘤の死因の6割がこうした要素に当たるという。
 他にも、腹部大動脈瘤が破裂することもある。その場合も、ただちに治療を受けられない場合、助かる確率は50%しかないと言われている。

 東京都立多摩総合医療センター循環器内科担当医は、こう説明する。
 「解離すると、胸や背中に何かが刺さるような激痛が走ることが多い。亡くなられた鶴さんの状況から判断して、おそらく大動脈が解離する段階で激痛に襲われ、事故にならないよう道路端にハザードランプを点灯させて停車。間もなく大動脈瘤が破裂して、意識不明に陥ったのではないでしょうか」

 一般的に大動脈のこぶは、一度できると、その主な原因となる高血圧や動脈硬化の治療をしても徐々に大きくなってしまう。破裂のリスクが高まった場合の対処としては、外科手術となる。
 「患者さんが最初に行うのは、まず超音波やCT検査です。できたこぶの形や角度などで破裂の危険度は異なりますが、腹部大動脈瘤が1年以内に破裂する確率は、直径5センチで4.3%、4センチ以上でも1.4%ぐらいの可能性があります。ただし、手術の危険性(死亡率3%前後)を考えると、5センチ以上か、半年で5ミリ以上拡大した場合に手術を検討することになります」(同)
 CT検査では、血栓内に三日月形の高吸収域と呼ばれる白い部分がある場合、壁内出血が考えられ、急性破裂の危険性が高いと判断されるという。

 そもそも血管は、加齢や高血圧、糖尿病といった生活習慣病、さらに炎症などによって硬く厚くなる。ところが、その厚さは一律ではなく、一部の血管壁の組織が逆に脆弱になることがある。それに高血圧がかかることで、血管がこぶ状に膨らむ。
 「これに、喫煙などによる酸化ストレスや、脂質などが溜まった動脈硬化粥種、慢性炎症などが加わると、3層からなる血管壁の真ん中の膜が変性し、破裂につながってしまうのです」(健康ライター)
 喫煙などの生活習慣の違いのためか、大動脈瘤は男性が女性より5倍近く多いという報告もあり、家族に大動脈瘤が発見されている場合も発生率が高くなるという。

 では、血管にこぶができた場合、自覚症状はどんなものになるのだろうか。
 「血管にできたこぶで、背中などに激痛が走るが、多くの場合、痛くもかゆくもありません。そのため、やはり検査で発見されることが多い。実際に腹部動脈瘤は肝臓病や腹痛でお腹の超音波検査をした際、偶然見つかることが多いとされます。また、こぶが大きくなると拍動を感じるほか、身体の外から拍動する腫瘤に触れるようになる。そうした場合は、周囲の組織を押し付けて、腰の痛みや腹部の痛みなどが出てくることもあります」(同)
 また、大動脈瘤内部では、血流が留まり血栓ができやすくなる。その血栓が剥がれ落ち、細かく動脈を詰まらせ、腎臓障害、下肢の血流減少が起きることもあるという。

 大動脈瘤の予防と治療で大事なことは、喫煙者はタバコを辞めることと、血圧が高い人は、直ちに数値を下げるように努力することだ。また同時に、コレステロールや血糖値を含め、しっかりコントロールすることも予防につながる。
 都内総合医療クリニックの久富茂樹院長も、主因である“禁煙”と血圧対策が何よりも大切だと言う。
 「この2つを守れることができれば、破裂リスクは2割ほどまでに減ります。逆に喫煙を続けている人は、年間0.4ミリほど、こぶの直径が大きくなるという報告もあります。腹部大動脈瘤が発見されれば、超音波などで慎重な経過観察となりますが、これも一定の大きさ以上になると外科的な治療が必要となります」

 治療法は大きく分けて二つある。一つは、カテーテルの中にステント(伸縮可能な金属を取り付けた人工血管)を収納するステントグラフト手術と、外科手術で人工血管を縫い付けて埋め込む「人工血管置換術」だ。
 「人工血管置換術の手術は、受ける人の体温の調整が難しいと言われていますが、最近の報告では“32℃が適正”との判断している。しかし、32℃であっても30分以内に血管の吻合を終えなければ肝臓や腎臓などの臓器にダメージを与えてしまうなど、高い技術が要求されます。手術時の危険性が言われるのはそのためで、患者側は治療を受ける際、事前に病院の手術件数を含めた治療実績を調べることも大切です」(前出・健康ライター)

 静かに忍び寄り、突如、死を引き起こす大動脈瘤破裂。改めてその恐ろしさを肝に銘じておこう。

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