菜乃花 2018年10月04日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 バブルとデフレ

掲載日時 2016年07月21日 10時00分 [政治] / 掲載号 2016年7月28日号

 国税庁が、相続税の算定基準となる路線価を発表した。全国平均で前年比0.2%上回り、リーマンショック以来8年ぶりのプラスとなった。都道府県別に見ると、東京、大阪、愛知などの大都市を抱えるところだけではなく、広島や福岡など、地方中核都市を抱える県にも地価上昇が広がり、全国14都道府県の地価が上昇した。

 上昇率が最も高かったのは、東京都の2.9%だったが、今回の路線価の最大の特徴は、地価上昇の都心部集中だ。
 日本で一番地価の高い銀座5丁目銀座中央通りの通称「鳩居堂」前の路線価は、前年比18.7%も上昇。1平方メートル当たり3200万円となり、これは、バブルのピークだった'92年の3650万円に迫る値段だ。
 東京オリンピックによる経済活況が原因とも言われるが、大阪中心部なども大きく値を上げており、オリンピックが反映されているだけではない。都心部の地価高騰はバブルとみられるが、実は、いまの金融環境は、バブル期と実によく似ているのだ。

 バブル期には、日銀の窓口規制が生きていた。日銀が銀行ごとに融資の上限枠を決めていたのだ。もし、その枠を使い残すと、銀行は融資枠を削られてしまう。そこで銀行は融資枠を使い切るために、不動産融資に傾注していったのだ。
 いま、日銀はマイナス金利政策を採用している。銀行が余裕資金を日銀に預けると0.1%のマイナス金利を課される。そのため銀行は、ニーズがなくても融資を拡大しなければならない。その結果、不動産融資を拡大させているのだ。

 ただし、バブル期とは決定的に違う点もある。一つは、地方の地価だ。バブル期は全国的に地価が上昇したが、今回は大都市だけ。路線価で見ても、全国47都道府県のうち、3分の2以上の県で、地価は相変わらず下落し続けているのが実態だ。
 もう一つの違いは、庶民の財布だ。景気の影響を最も敏感に反映すると言われる、サラリーマンのお小遣いの調査を新生銀行が発表した。
 今年の男性会社員のお小遣いは、前年比231円増の3万7873円だった。前年比にすると微増なのだが、これは'79年の調査開始以来、過去3番目に低い水準で、バブル期の'90年の半分以下。一方、女性会社員のお小遣いは3万3502円と、前年比966円の減少となった。庶民の財布は、バブルどころか完全なデフレ状態になっている。
 これが一体何を意味するのか。30年前のバブルのときには、実体経済も潤っていた。だから、庶民も多少なりともバブルの恩恵を浮けることができた。ところが今回のバブルは、全くそれがない。そのため、フラット35の住宅ローン金利が0.930%と史上最低を記録するなかでも、住宅地や地方の地価がちっとも上昇しないのだ。

 問題は、このバブルがいつ弾けるのかということになる。
 一つのタイミングとしては、日銀が金融引き締めに転じたときが挙げられるだろうが、もう一つの可能性は、東京オリンピックの少し前だ。北京オリンピックの際には、開幕の前年にバブルが崩壊した。過熱の著しい今回は、もう少し早いかもしれない。

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