葉加瀬マイ 2018年11月29日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 「恐怖の隣人もの」にハマる! 『クリーピー 偽りの隣人』

掲載日時 2016年07月01日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年7月7日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 「恐怖の隣人もの」にハマる! 『クリーピー 偽りの隣人』

 「実に気味の悪い(クリーピー)」な隣人を巡るサスペンス映画、なかなか面白かったです。
 というのも、5月末まで放送されていたフジテレビのサスペンスドラマ『火の粉』に、ここ10年ぶりくらいにドハマりしていたんですが、このドラマも、引っ越してきた怪しい隣人ユースケ・サンタマリアに家族が蝕まれていく話でした。

 今回の映画は、西島秀俊演じる主人公夫婦が引っ越してくる側なので、ちょっと設定は違いますが、変な隣人を持ってしまったばかりに、どんどん妙な方向に引きずり込まれていく点は共通しています。
 住む家は選べても、隣人は選べませんから、私たち誰にでも怪しい人間に遭遇する可能性があります。いや、むしろ自分の方が「奇妙」な隣人と受け取られているかもしれない。そう考えるとリアルで、ゾッとさせられる設定なんですよね。
 映画の方は、西島が、刑事を辞めるきっかけとなった一家失踪事件も隣人問題と絡み合ってくるので、やや話が複雑に。しかも、それを2時間の尺に収めなければいけないので、随所にツメの甘さが見られる。まぁ、それは仕方ないです。

 しかし映画とテレビ、どっちもそうなのですが、“事が大きくなる前に家族内でちゃんと相談せぇよ”と見ていてイライラが募るんですね。いわゆる「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」がまったくなっていない。ひるがえって自分の家にしても、日常の情報の共有化ができてない。日がな一日、カミさんはいったいどこに行っているのか、知るよしもありませんから。
 西島の妻役の竹内結子も隣人の香川照之の不遜な態度に「ちょっとどうなの」と思っているくせに、“作りすぎたシチューをお隣に持って行くのはなぜなんだ? 逆に、持って来るあなたの方が気持ち悪いよ”と、小さな違和感を我々に与え続けるのは、演出上の狙いでしょう。
 香川照之が、竹内結子に向かって「ご主人と僕、どちらが魅力的ですか?」と聞く場面がありますが、どう見たって西島に決まってるだろう、と。そういうところにもイライラしてしまうのは、監督の思うツボなんでしょうね。

 それにしても、「役所広司さんが演じていた役をオファーできる年齢になりましたね」と監督から言われたらしい西島秀俊。確かに役所広司的な風格が出てきましたが、何よりあの無精髭の生え方、なんで不潔にならないのか。あのさりげない格好よさに憧れて真似をしようとすると、こっちはただの汚ねぇジジイになっちゃう。不条理ですねぇ。

画像提供元:(C)2016「クリーピー」製作委員会

■『クリーピー 偽りの隣人』監督/黒沢清 出演/西島秀俊、竹内結子、川口春奈、東出昌大、香川照之ほか 配給/松竹 アスミック・エース 全国公開中。
 刑事から犯罪心理学者に転身した高倉(西島秀俊)は、刑事時代の同僚である野上(東出昌大)から6年前の一家失踪事件の分析を頼まれる。唯一の生存者である長女の早紀(川口春奈)の記憶を探るが、依然、事件の真相は謎に包まれていた。一方、高倉が妻(竹内結子)と一緒に引っ越した先の隣人・西野に違和感を覚える。そんなある日、高倉夫妻の家に西野の娘が駆け込んできて、驚くべき事実を打ち明ける。

■やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

関連タグ:やくみつるの「シネマ小言主義」


エンタメ新着記事

» もっと見る

やくみつるの「シネマ小言主義」 「恐怖の隣人もの」にハマる! 『クリーピー 偽りの隣人』

Close

WJガールオーディション

▲ PAGE TOP