葉月あや 2019年5月2日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 家具屋姫の反乱

掲載日時 2015年03月17日 11時00分 [社会] / 掲載号 2015年3月26日号

 1月13日の取締役会で自分が社長を解任されたのは、「クーデターだと思っている。社員はテロだと言っている」。大塚家具の創業者、大塚勝久氏は2月25日の記者会見でそう語った。大塚家具の取締役会は7人で構成されるが、大塚家三女の夫が解任賛成に寝返ったため、創業者が社長の椅子から追放されることになってしまったのだ。
 首謀者は、もちろん長女で現社長の大塚久美子氏だ。もともと仲の良かった親子に一体何が起きたのか。

 久美子氏は勝久氏の後任として、'09年に大塚家具の社長に就任する。しかし、5年間社長を務めた後、昨年7月に解任されて勝久氏が社長に復帰した。5年間、業績が低迷したことや、経営方針を巡って親子の対立があったためだと言われている。しかし、たった半年で、再び久美子氏が社長に復帰。これが「クーデター」と呼ばれたものだ。
 創業者の編み出したビジネスモデルは、会員制で良質な家具を高値で売ること。これに対して久美子氏は、割安な価格でカジュアルな家具を販売するというもの。どちらのビジネスモデルが正しいとは言えない。しかし、対立の解決方法は簡単だ。会員制の店舗とオープンで割安の店舗を併存させ、どちらの業績が伸びるのかをみればよいだけだからだ。
 ところが昨年7月に社長復帰した勝久氏は、久美子氏の肝入りで作られた青山の北欧家具の店を閉鎖した。これに久美子氏が切れてしまったのだろう。

 しかし勝久氏は、自分が社長に3度目の復帰ができると踏んでいたのだと思う。株主総会になれば、自分の勝ちが見えていたからだ。勝久氏の持ち株比率は、18%。妻が持つ2%を加えれば、20%の株を保有している。これに対して、久美子氏の実質的な持ち株は10%。まともに戦えば久美子氏の勝ち目はない。
 ところが、一橋大学卒で元銀行員でもある久美子氏は、思いも寄らぬ手段に打って出た。7%を保有する米国の投資ファンド、ブランデス・インベストメント・パートナーズ投資ファンドを味方につけたのだ。このファンドは、さらなる株の買い増しをしているとも言われ、これで勝久氏と久美子氏の勢力はほぼ肩を並べたと言える。問題は、久美子氏がファンドを味方につけたやり方だ。久美子氏は、年間の配当を40円から80円へと倍増させると発表したのだ。
 昨年の大塚家具は赤字だ。赤字でも50年以上経営を続けていれば含み資産があるから、配当自体は可能だが、タコ足配当をすれば会社は傷つく。つまり、いま久美子社長がやろうとしていることは、大塚家具を傷つけてでも創業者を会社から追い出そうということなのだ。

 3月末に開かれる株主総会に向けて、両者は委任状の争奪戦に入っており、株式の奪い合いで株価も上昇している。ただ、勝敗の行方を左右するのは、機関投資家の動きだ。大塚家具の株式は、日本生命が6%、東京海上3%など、大株主が何人かいる。彼らがどちらを支持するのかが、決定的な影響を持つのだ。
 現段階で予想は難しいが、機関投資家は、久美子氏を支持するのではないかという気が私はしている。彼らは、会社の歴史や義理、人情よりも、投資収益を最大化する方向に、投資の舵を切っているからだ。

関連タグ:森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 大塚家具


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