菜乃花 2018年10月04日号

プロ野球トライアウト密着取材 戦力外通告から這い上がる選手たち(4)

掲載日時 2015年11月29日 14時00分 [スポーツ] / 掲載号 2015年12月3日号

 「NPBの編成は、これまでの普段の試合から見てくれています。トライアウトで抑えた、ヒットが出たとか関係ないんですね。まだ動ける、体のキレもあるんだ、というところが見せられれば…」
 そう話す受験選手も多かった。しかし、一般論として、トライアウト選手にお声が掛かるのは、一番最後である。ドラフト、FA、外国人選手の獲得、トレードを終え、予定していた補強ができなかったとき、初めてトライアウト選手に道が開かれるのだ。
 彼らの野球に対する思いは熱いが、ドラフトから始まる来季への補強の順番を変えてまでして獲得したい選手が現れないのも、また現実である。

 プロ野球解説者で、石川ミリオンスターズの取締役も務める佐野慈紀氏が視察後、こう語ってくれた。
 「僕は受験選手にはもっとアピールしてほしかったと思いました。ピッチャーも打者3人にしか投げられませんが、もっと投げさせてあげたら、また違ったものも見えたと思う」

 佐野氏の所属するBCリーグからは、今年のドラフト会議で10人近い選手が指名された(育成を含む)。石川で復調した西村の例もある。今回の視察には選手補充の意味合いもあったはずだが、こうも語った。
 「西村には頑張ってほしい。だけど、ウチが受験選手を獲るのは最後のほう。NPBから独立に流れて、またNPBに復活した選手は皆無に等しいし、覚悟がないとダメ。だからこそ、受験選手には頑張ってほしかった」

 2年連続のトライアウト受験となってしまった北方悠誠(21)が言った。
 「むしろ、海外でやってみたい」

 北方は昨年オフ、DeNAを解雇されたが、福岡ソフトバンクホークスの育成枠で拾われた。昨年のDeNAは所属投手が支配下登録70人の半分以上を占め、二軍投手は練習すらままならなかった。北方は「いつでも好きなときに、好きなだけ練習できる」というホークスで練習を続け、制球難の課題を克服しつつあった。北方のトライアウトのマウンドで、いきなり投球がバックネットを直撃したが、去年とは別人のように落ち着いていた。
 「この1年、結果を出せなかったのは残念ですが、自分の一番良いときに戻りつつある。『NPB以外でも野球を続けるか』と聞かれれば、僕は海外に挑戦してみたい。言葉も通用しないなか、野球だけで勝負して、今の状態なら海外でもやっていける」
 去年トライアウトを受けて、今年ホークスで積み重ねてきたものを確認することもできたという。解雇の通告は非情だが、「海外」という、さらに高いステージを自分に課すまで、北方は精神的に強くなっていた。

 つらいときこそ、自分にさらに高い課題を課す。この生き方はサラリーマンにも通じるものがある。トライアウトとは、人生を新たに切り開くためのステージでもあるようだ。

スポーツライター:美山和也

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