鈴木ふみ奈 2018年11月1日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 ★第287回 チャイナ・グローバリズムの脅威

掲載日時 2018年09月20日 06時00分 [社会] / 掲載号 2018年9月27日号

 世界は「中国製造2025」や「一帯一路」を巡り、大激動の時代を迎えている。最悪のケースでは、グローバリズムの覇権国が交代し、チャイナ・グローバリズムの世界という「人類の悪夢」が訪れることすらあり得る。

 日本国内の報道が問題なのは、中国製造2025や一帯一路を「経済政策」あるいは「ビジネスチャンス」としてしか語らないことだ。

 中国製造2025は、実際には先端技術を含むすべての産業を「自国産」とすることで、軍事力の基盤を強化する中国共産党の軍事戦略である。

 しかも、中国共産党は技術獲得のために他国の知的財産権を侵害し、スパイを送り込み、ZTE(中国の国営会社)やファーウェイ(人民解放軍出身者が創った会社)といった企業までをも利用し、情報を不正に取得しようとしている。

 結果的に、アメリカは'18年7月31日、上院、下院が「国防権限法」を圧倒的多数で可決。ZTE、ファーウェイとの契約を、アメリカ政府機関に禁じた。国防権限法は、両社が「中国情報機関と関係がある」と断定している。欧州では、欧州委員会とEU加盟国政府が連携し、域外からの買収審査を強化しつつある。もちろん、対象国は中国だ。

 驚くべきことに、世界最高のグローバリズムの国際協定であるEUのユンケル委員長までもが、買収審査強化に際し、
「初心な自由貿易の支持者であってはならず、戦略的な利益は常に守らねばならない」
 と、語っている。時代は変わるものだ。

 「あの」中国べったりだったドイツは、'18年8月1日に、宇宙船や航空機の部品製造技術で名高い独北西部の精密機器メーカー「ライフェルト・メタル・スピニング」に対する、中国企業の買収案件に「拒否権」を行使(理由はずばり「安全保障上の理由」)。明らかに、対中警戒に移行した。オーストラリア政府は8月23日、次世代5Gネットワーク構築に際し、
「オーストラリアの法律と矛盾する外国政府からの支持に従う可能性があるメーカー」
 という製品を禁止。具体的な国名や企業名は上げていないが、同通達がZTEとファーウェイを意味しているのは明らかだ。

 イギリスのサイバーセキュリティを担当する「国家サイバーセキュリティセンター」は、'18年4月時点で英国通信事業者に対し、ZTEの製造する機器を使用しないように警告している。

 ところが、わが国の動きは鈍い。それどころか、日系企業の中には中国製造2025に「協力」しようとしているところまである有様だ。'18年7月10日、三菱電機が中国製造2025を「商機(ビジネスチャンス)」として捉え、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)などの先端技術を中国の製造現場に広げるビジネスを強化すると報じた。

 敵国の軍事力を強化するため、わざわざ先端技術を渡す。こんな国が亡ばなかったら、そちらの方が不思議である。もっとも三菱の愚行は、まさに現在の日本の病を象徴していると言えないこともない。世界の趨勢や、チャイナ・グローバリズムの問題、日本国の防衛安全保障などは、
「知らない。そんなことより、ビジネスチャンスはあるんだろうな?」
 とばかりに、ビジネス(カネ儲け)をすべてに優先させる。

 この愚かな「ビジネス中心主義」の態度を、政治家までもがビジネス優先で思考してしまう。愚かなグローバリストの奴隷たちが、中国共産党に利用されているという話にすぎない。

 ビジネスチャンスといえば、一帯一路も同じだ。

 アメリカ政府は'18年8月16日、中華人民共和国の軍事力に関する「中国の軍事と安全保障の発展についての年次報告書」を公表した。報告書は、中国の一帯一路に対する「警戒感」で満ち溢れていた。報告書では、一帯一路について構想自体が軍事的な要素を含んでいると断定。中国は「一帯一路」により、まずは相手国に、中国資本に対する依存状態を作り出す。その後、資本的関係を相手の弱点として利用し、軍事関連の権益の移譲に持っていく。

 具体的な例としてスリランカのハンバントタ港が挙げられている。'10年、スリランカのコロンボの南東250㎞に位置する漁村のハンバントタに、中国が10億㌦以上を融資し、港湾を建設。スリランカ政府は、最高6.3%の金利を支払い続けることができず、中国に対し債務不履行状態に陥った。

 すると、'17年7月29日、スリランカ政府は南部ハンバントタ港の運営権を、中国企業に譲渡する契約を締結。スリランカ政府は債務軽減と引き換えに、中国側に港の99年間の運営権、および治安警備の権限を譲渡せざるを得なくなったのである。インフラを失い、治外法権も提供するわけだ。

「債務による罠だ。植民地になったと同然だ」
 と、嘆き節を発したのは、スリランカの野党系国会議員である。まさに、議員の表現通り、スリランカは中華人民共和国の植民地となった。

 中国の一帯一路は、中国製造2025同様に、表向きは「経済政策」だが、実態は「軍事戦略」なのである。あるいは、帝国主義だ。少なくとも、アメリカ政府は中国共産党の狙いを正確に見抜いている。
 それにも関わらず、日本の一帯一路に対する論評は、「一帯一路というビジネスチャンスを迎える日本企業」系ばかりだ。

 一帯一路は、中国共産党の「冊封体制の復活」という夢の実現に向けた「軍事戦略」であり、兵站の輸送路整備であり、軍艦の停泊港建設なのある。

 この現実に目を向けず、
「一帯一路! ビジネスチャンスが訪れた」
 としか考えられない日本の政治家、企業経営者たち。
 政治家や財界人が愚かならば、せめて国民が正しい情報を知り、事態を是正しなければならない。何しろ、ツケを払わされるのは、我々日本国民なのである。

 中国製造2025も一帯一路も、中国共産党の軍事戦略だ。これは事実である。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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