菜乃花 2018年10月04日号

本好きリビドー(136)

掲載日時 2016年12月30日 15時00分 [エンタメ] / 掲載号 2017年1月5・12日合併号

◎快楽の1冊
『喧嘩(すてごろ)』 黒川博行 KADOKAWA 1700円(本体価格)

 2014年に『破門』が直木賞を得て以降、黒川博行はそれまで以上にパワーアップしているように思われる。受賞後第1作の『後妻業』は実際に起きた遺産狙いの犯罪を連想させ、大いに評判を呼んだ。映画化となり、'16年に公開されている。さらに『破門』も映画化され、'17年に公開される。旺盛な創作力を増し、それを多くの読者が支持、注目するようになっているのではないか。
 さて本書『喧嘩』は『破門』同様〈疫病神〉シリーズの最新作である。建設コンサルタントの二宮と半端ではないイケイケ・ヤクザの桑原が活躍する。ここで整理して書くと、この作者は1984年にデビューした。キャリア前半の頃は本格ミステリー色の濃い警察小説を得意としていたが、'91年の『大博打』以降、アウトロー小説の要素を前面に押し出すようになった。〈疫病神〉シリーズもその延長線上の作品だ。1作目『疫病神』が刊行されたのは'97年だ。
 本格ミステリーからアウトロー小説への移行、と書いたけれど、実はこの二つは作者にとってさほどかけ離れたものではない。関西を舞台にしてコンビが活躍する。そして2人がテンポのいいユーモラスな会話の応酬をし、犯罪に関わっていく点は同じなのだ。
 今回の『喧嘩』は二宮が議会議員事務所と暴力団とのトラブル処理を依頼され、桑原に協力を求めるというストーリーだ。
 本作で注目すべきは桑原が破門によってフリーランスになっているところだろう。つまり組の後ろ盾がない不安定な立場なのだ。二宮は常に金に困っている男で、恵まれていない。そんなアウトローの2人が政治家という権力者に挑むところが爽快なわけだ。
 一種のヒーロー小説だが、前述の通り、ユーモラスな会話の応酬、迫力あるバイオレンスも楽しんでいただきたい。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 「女にモテたい」「イイ女を抱きたい」とは、男なら誰もが持つ願望だろう。かつては女を抱くためだけにロック・ミュージシャンになったと豪語する、強者もいたほどだ。
 だが、現代の価値観では、そこまで女に固執するのは愚行と受け取られる。いまや人生の最大の目標を「女」に置く男は、希少といえるだろう。
 今回紹介する本は、そうした男の一代記。タイトルは『紀州のドン・ファン』(講談社/780円+税)。著者は野崎幸助氏。和歌山県田辺市出身の大金持ちである。
 「カネでセックスをして何が悪い。セックスのために俺はカネを稼いでいる」と、きっぱりと言い切り、今年2月には交際中の若い女に現金6000万円と5000万円相当の宝石を盗まれたことを、平然とテレビで告白し話題となった人物だ。
 職業は不動産業や酒類販売業を営む実業家。中学卒業後、鉄くず拾いをはじめ、さまざまな職を転々とし、裸一貫で財を成す。現在75歳だが、4000人の女につぎ込んだ金額、なんと30億円! 桁違いの金額と言っていい。
 そんな人生を「あきれた」という人もいれば、「あっぱれ」という人もいる。だが大切なのは、当の野崎氏本人が、みじんも後悔していないこと。この潔さは、痛快この上ない。
 このご仁はセックスも薬いらずの現役で、いまだにギラギラした性欲に満ちているそうだ。
 女への欲望は、すべての男の活力であり、原動力たりえることを再認識できる1冊である。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

関連タグ:本好きリビドー

エンタメ新着記事

» もっと見る

本好きリビドー(136)

Close

マダムとおしゃべり館

▲ PAGE TOP