森咲智美 2018年11月22日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 まさに“双子”ミステリーの金字塔! 『2重螺旋の恋人』

掲載日時 2018年08月12日 13時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年8月16日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 まさに“双子”ミステリーの金字塔! 『2重螺旋の恋人』

 これまでも2時間ドラマやミステリー映画のフックとして、さんざん「双子」モチーフが使われてきました。
 それ使っちゃおしまいという仕掛けに真っ向から取り組み、「真打ち」と言ってよいレベルまで引き上げたこの作品。同映画をもって以降は、「双子」は“禁じ手にしていいんじゃ?”と思うほどです。

 まるでオセロの駒のように正反対の魅力を放つ双子の精神分析医に翻弄される主人公のクロエ。複雑に入り組んだプロットと、二重三重に張られる伏線。映像もしばしば彼女の妄想と現実が交錯し、さらに、見ているものを不安にさせるような鏡や螺旋階段など、見ているだけでめまいがするような奇っ怪な現代アートが多用され、見終わった後も、何が嘘で何が現実だったのか…分からないほどです。
 つい、いちいち深読みしたくなりますが、この作品は迷宮にはまり込んだようなクラクラの幻惑感を味わう映画だと心得て、混乱したまま、置いとくのがよろしいかと思われます。

 自分はこれまでのところ、精神科や心療内科のお世話になったことはないのですが、欧米のカウンセリングというのは、こんな受付の女性1人もいない、高級マンションのセレブな一室で1対1になり、たわいない自分語りをするだけで150ユーロ取られるようなものなんでしょうか。
 約10年前、『精神』という日本のドキュメンタリー映画を見たことがありますが、そこでは、患者さんと対峙する精神科医の実際の様子が生々しく記録されていましたが、本作のように恋愛に発展しかねないようなスタイリッシュさは、当然ですが皆無でしたね。

 さらにいうと、身近に「双子」がいなかったので、双子自身がどういう距離感でお互いを感じて生活しているのか、全く実感が湧きません。たしか、杏と東出昌大の子供は双子だったと思いますが、育てる親の方も、同じ出自の2人に対し、どう均等に接するのか…。ずっと共に生活していると、似て非なるというか、全く別人のように思えてくるんでしょうかね。
 芸能界では、芸人や歌手ならともかく、双子の俳優は大成しにくいと聞いたことがあります。ザ・ピーナッツ、こまどり姉妹、ザ・リリーズ、おすぎとピーコ、ザ・たっち、茉奈・佳奈…そういえば皆、ご本人のタレント性で勝負されている方々ばかり。他者に扮する俳優の場合、一人二役すれば足りるとなるのでしょうか。
 相撲界にも双子力士「貴源治」「貴公俊」がいます。彼らの見分け方は、額の生え際のラインの違いですよ!

画像提供元
(C)2017 - MANDARIN PRODUCTION - FOZ - MARS FILMS - PLAYTIME - FRANCE 2 CINEMA - SCOPE PICTURES / JEAN-CLAUDE MOIREAU

■『2重螺旋の恋人』監督・脚本/フランソワ・オゾン
出演/マリーヌ・ヴァクト、ジェレミー・レニエ、ジャクリーン・ビセット、ミリアム・ボワイエ、ドミニク・レイモン
配給/キノフィルムズ

 8月4日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。
 原因不明の腹痛に悩まされていたクロエは、精神分析医ポールの元を訪れる。穏やかなカウンセリングによって痛みから解放されたクロエは、ポールと恋に落ち、一緒に暮らし始める。そんなある日、クロエは街でポールにそっくりの男と出会う。ルイと名乗るその男はポールと双子で、職業も同じ精神分析医だという。なぜポールはルイの存在を隠しているのか、真実を突き止めようと、偽名を使ってルイの診察室に通い始めるが、優しいポールとは正反対の傲慢で挑発的なルイに惹きつけられていく…。

やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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