新型肺炎パンデミック 東京五輪を襲う「開催中止」危機

社会・2020/01/30 13:30 / 掲載号 2020年2月13日号
新型肺炎パンデミック 東京五輪を襲う「開催中止」危機

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 中国湖北省武漢市発の新型コロナウイルスによる肺炎が拡大の一途である。1月26日時点で患者数は2500人を超え、日本やタイ、韓国、台湾、米国などでも感染者が確認された。

 厚生労働省は当初、「現時点では本感染症は、家族間などの限定的なヒトからヒトへの感染の可能性が否定できない事例が報告されているものの、持続的なヒトからヒトへの感染の明らかな証拠はない。武漢市から帰国・入国される方におかれましては、咳や発熱等の症状がある場合には、マスクを着用するなどし、事前に医療機関へ連絡したうえで、受診」するよう呼び掛けているが、認識が甘いといわざるを得ない。

 インフルエンザの達人と言われる元小樽市保健所所長で、医学博士・作家の外岡立人氏が言う。

「中国内の医療担当者14人がウイルス感染し、武漢から離れた北京、上海、広東でも患者が多数確認されている。中国政府は基本的に武漢市を閉鎖、不要不急の市外への外出を禁止している。新型コロナウイルス感染予防法としては安心できる方法はない。手洗い、マスクの着用、うがいは意味がない。感染者との接触を避けるといっても、誰が感染者か分からない有様ですから」

 何やら、八方塞がりの状況なのだ。厚労省ののんびりとした様子とは打って変わって、新型コロナウイルスの医療現場最前線では、
〈私は毎日、大量の発症者と思しき患者を診察している。だが、患者の数が多すぎて、とても収容しきれない。何せ、隔離病棟は2棟しかないのだ。加えて、医療スタッフの一部も感染し、戦線離脱となってしまったが、その代役もいない〉

 これは武漢市で新型コロナウイルスと闘う医師がインターネット上に載せたコメントである。

「WHO(世界保健機構)はいずれ、新型コロナウイルスがパンデミックになると予測していると思います。豚インフルがパンデミック(2009年)になった際、WHOは対応が遅れがちでしたが、今回は迅速です。とはいえ、ワクチンをつくるのには半年はかかるでしょうから、この夏の東京オリンピックは最悪、中止の決断をしなくてはならなくなるかもしれない」(外岡氏)

 それにしても、どうしてこのような騒ぎになってしまったのか。21世紀に入り中国の衛生環境は格段に改善したとされる。2002年11月〜’03年7月にかけての『SARS』(重症急性呼吸器症候群)のような異常事態は「2度と起きない」と医療関係者は信じていたという。

 新型コロナウイルスの宿主としては、タケネズミが疑われている。タケネズミは中国の四川省や広東省、広西チワン族自治区でも養殖され1匹100元前後で売られている。とすれば、発生源が武漢の市場だけにとどまらない可能性があるのだ。

 ともあれ、新型コロナウイルスが拡大した背景には中国政府の「臭いものにはフタ」という隠ぺい体質がある。最初の患者は、昨年12月8日に遡る。武漢市で原因不明の肺炎患者が報告されたのだ。

 12月30日、「原因不明の肺炎救援工作をよくすることに関する緊急通知」という公文書が報告され、それがネットに流出。武漢市で原因不明の肺炎が広がっていると中国国内で噂になった。しかし、感染源地とされる華南海鮮市場は閉鎖されず、多くの人が年末の買い物に訪れていた。

「ウイルスの検査法には感度のいいものが使われるようになり、かなりの患者が出ているのに、中国政府はそれを隠していた。それどころか、熱が出ている人をすぐに隔離しなかった。春節期間中は30億もの人々が移動する。新型コロナウイルスはそれを契機に世界に広まるでしょう。パンデミックになるのは時間の問題だと思います」(外岡氏)

 武漢市当局は1月23日午前10時から武漢の空港や駅を出発する航空便や列車、地下鉄、バスを停止すると発表。春節による大型連休を前に1000万人を超える住民の移動を大幅に制限し、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を封じ込める措置を講じた。

「武漢市では高速鉄道の切符を求めて住民が押しかけ、市内のコンビニエンスストアでは23日早朝から、マスク姿の住民が長蛇の列を作った。市民の間では物流が遮断されたことで、食品の買い占め騒動が起きている」(現地特派員)

 中国政府は、習近平国家主席が1月20日に指示を出してようやく情報開示姿勢に転じたが、対応は後手後手だ。国家衛生健康委員会の李斌・副主任は会見で「武漢では地域的に感染している住宅地もある」として、人から人への感染が広がっていることを遅まきながら明らかにした。

 また、中国疾病予防コントロールセンターの高福・主任は「ウイルスが変異する可能性があり、さらに拡散するリスクがある。(感染力が極めて強い)スーパー・スプレッダーの出現が懸念されているが、まだ証拠はない。注視している」と述べた。

 外岡氏が警鐘を鳴らす。

「場合によっては、習近平体制を揺るがしかねない事態になってきた。新型コロナウイルスは豚インフルと比べ毒性は強いし、致死率も高い。ナメてかからない方がいいと思いますね」

 SRASの場合、症例報告から封じ込め成功までに約9カ月を要した。東京五輪で盛り上がりを見せ始めた日本だが、最悪中止に追い込まれる事態も想定しなければならない。

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