林ゆめ 2018年12月6日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 中国経済は終わったのか

掲載日時 2016年02月04日 10時00分 [政治] / 掲載号 2016年2月11日号

 年初以来、世界同時株安の状況が続いている。その大きな原因になったのが、中国経済の失速だ。
 1月19日に中国国家統計局が発表した'15年の経済成長率は6.9%と、25年ぶりの低い伸びにとどまった。だが、7%近い成長率は10年で経済規模が2倍に拡大する率で、けっして悪い数字とは言えない。それでも、株式市場が、なぜ悲観しているのかといえば、中国の経済成長率の数字が信用できないからだ。

 そのことは、GDP統計に先だって発表された貿易統計を見れば、明らかだ。'15年の貿易総額(輸出+輸入)は、前年比8.0%減という大幅減だったのだ。特に、輸入は前年比14.1%も減っている。高成長を続ける国の輸入がこんなに減ることは、まずあり得ないだろう。さらに深刻なのは、輸出で前年比2.8%減と、マイナスに転落したことだ。
 貿易統計は、輸出入の相手先国の統計があるので、ウソをつけない。そして、中国の輸出が減少したということは、大量生産で低価格品を作り、それを輸出することで世界の工場の地位を獲得するという、中国の経済戦略が行き詰まったことを意味する。
 この行き詰まりの最大の原因は、人件費の高騰だ。中国の賃金はこの10年で約4倍にも高騰している。その賃金水準では、低価格品を作る際の採算が合わなくなってきているのだ。

 私はミニカーをコレクションしているので、何が起きたのかを、ミニカーで説明しよう。
 ミニカーは、製造にそれなりの技術が必要となる上に、塗装や組み立てに人手が要るため、技術力と安い賃金が両立している国でしか生産ができない。
 子供の玩具だから、そんなに高い価格はつけられないからだ。

 60年代、ミニカーの主産地は、ヨーロッパだった。その地位を70年代に奪ったのが、日本だ。トミーがトミカを発売したのは、'70年のこと。しかし、その後、日本の賃金が上昇したことで、国内生産が難しくなり、'94年に中国製のトミカが誕生する。
 その後、じわじわと中国製が増えていき、'00年には完全に中国製に置き換わった。

 ところが、その中国の人件費高騰で、'09年にベトナム製のトミカが登場して、いまでも、そのシェアを高めている。
 関係者に聞くと、当初のベトナムの技術水準は、話にならなかったそうだ。バリ取りひとつでも、中国はローターを使って一気に行うが、ベトナムではそれができず、人海戦術でヤスリがけをしていたという。

 しかし、そのベトナムも、着実に技術を高めてきた。もちろん、中国も技術力を上げているのだが、現在の賃金水準だと、子供用の低価格品は、もう作れない。だから中国製のミニカーは、高価格品にシフトしているのだ。
 すでに、中国製であるにもかかわらず、1万円前後もするミニカーが売られるようになっている。もちろん、そうしたミニカーを買えるのは大人のコレクターだけだから、市場は小さく、輸出は減少せざるを得ないのだ。

 これと同じようなことが、あらゆる分野で起きている。中国の経済失速は、すでに後戻りのできない構造変化なのだ。

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