菜乃花 2018年10月04日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 米国に見捨てられた安倍政権

掲載日時 2016年07月07日 10時00分 [政治] / 掲載号 2016年7月14日号

 6月16日の東京外国為替市場で、円相場が1ドル=103円台と、一気に3円近く円高に振れた。そして、日経平均株価も一時500円以上値下がりした。為替が円高になり、株価が下がれば、日本経済に大きな逆風となる。なぜ、こんなことが起きたのか。
 一部のメディアは、イギリスがEUを離脱するリスクが高まったからだとしたが、そうではない。今回起きたのは、ポンド安やユーロ安ではなく、円高だからだ。要するに本当の原因は国内にある。

 一番大きな原因は、この日、日銀が金融緩和を見送ったことだ。
 今年1月に日銀が導入したマイナス金利政策は、史上最大の失敗をもたらした。銀行が日銀に預ける当座預金の金利をマイナスにすれば、銀行は資金を日銀に預けるのをやめて、融資を拡大するだろうと日銀は読んでいた。しかし、資金需要がなかった銀行は、国債購入に走った。その結果、国債価格が暴騰し、国債金利までがマイナスに陥る事態を招いてしまったのだ。こうした状況が続くと、国債で資金運用をしているゆうちょ銀行や地方銀行の経営が厳しくなる。

 なぜそんな危険な政策を日銀が採ったのかといえば、通常の量的金融緩和を米国に許してもらえなかったからだろう。
 昨年末のゼロ金利解除以降、絶好調だった米国経済は明らかに変調をきたしている。そこに日本が金融緩和で為替をドル高・円安に誘導すれば、米国経済がますます危うくなってしまう。そのために米国は、今年に入ってからの日銀の量的金融緩和を認めてこなかったのだ。

 ただ、私は6月16日の金融政策決定会合で日銀が通常の金融緩和に踏み切ると見ていた。7月に参院選があるので、何としても日本経済の失速を避けなければならないからだ。市場もそう見ていたはずだ。だから、日銀が量的金融緩和を見送ったことで、失望による円高・株安を招いてしまった。
 6月16日は、米国の利上げも期待されていたが、見送られた。それは、相変わらず米国経済の不調が続いていることの証拠だ。そうした状況の下でも、安倍政権を支える強い意志が米国にあれば、米国は日本の金融緩和を許したはずだ。
 しかし、今回の参院選で、与党が政権を失うことはないと米国は判断したのだろう。だから、安倍政権の全面バックアップをやめたのだ。

 アベノミクスがデフレからの脱却を成功させたのは、アメリカが金融緩和を許してくれたからだ。そのお礼として安倍政権は、自衛隊を米軍の後方支援に差し出す安全保障関連法案を成立させた。しかし、そこまで米国に貢いだのに、すでにその効果は消滅したことになる。
 そうなると心配なのが、7月以降の日銀の行動だ。量的金融緩和を封じられた日銀が、マイナス金利政策の強化に出てくる可能性があるのだ。となれば、体力の劣る地銀が経営危機に陥ったり、ゆうちょ銀行の経営が行き詰まる可能性がでてくる。まさに金融危機の再来だ。

 ゆくゆくは、いま都心の不動産のバブルが崩壊し、資金を貸し込んでいる大手銀行の経営にも危機が訪れる。日本経済は剣ヶ峰の状態なのだ。

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