葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(227)

掲載日時 2018年11月07日 15時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年11月15日号

快楽の1冊
『マスコミ偽善者列伝 建前を言いつのる人々』 加地伸行 飛鳥新社 1389円(本体価格)

★俗流コメンテーターの無知を見抜く

 積年の疑問だが、例えば競馬・競輪あるいは競艇場ででもよし、言うことがあまりにハズレ続きの予想屋なら客は誰も寄り付かない。それどころか事と次第によれば物理的に八つ当たりもされたりで、そもそも商売にならないだろう。

 しかし、ことエコノミストとか経済学が専門(ということになっている)の大学教授に限っては、どれだけ見当違いのコメントを垂れ流そうが実地の経済予測をトンチンカンに見誤ろうが、謝罪はおろか一切の責任を取る必要がない。少しはバツの悪そうな表情を浮かべてもよかろうに。その点同じくレースの予想が外れても、その外しかたに芸のある競馬評論家、井崎脩五郎氏の姿勢をせめて見習うべきだ。

 現政権の方向性を、思想的にも政策的にも、仮にいかに断固支持できないにせよ(筆者も消費増税と移民受け入れ拡大と高等教育の無償化には全くもって不同意)、ごく単純素朴な数字だけを見れば、雇用状況の大幅な改善と年間自殺者の減少の二つを並べただけでも、評価すべきは公平に評価すべきではないのか。6年前の発足以前に比べて良好なのはいくら何でも明々白々なのだから。

 それをいまだにアベノミクスでなく“アホノミクス(老婆心で忠告するが、この表現、やめたほうがいい。手前じゃ気の利いたこと言ってるつもりかもしれないが、絶望的に寒いしセンスゼロ。駄洒落をなめてはいけない)”呼ばわりでこき下ろし続けて全否定、揚げ句に真顔でやがて1ドル=50円になるとか、ご託宣をのたもうてきた女性「論客」がいるが、何でここまで的外れな人物が同志社で教鞭を執れるのか?

 本書はこの手の物件をまとめて撫で斬り。古典の教養に裏打ちされた言葉が重い。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 書籍のタイトルは『全国マン・チン分布考』(集英社インターナショナル/1100円+税)。マン=女性器、チン=男根のことである。だからといって、おフザケの本ではない。全国至る場所に残る性器の呼び名を、方言に基づいて探求した真面目な1冊だ。

 例えば、中部から関西にかけて、女性器は「オメコ」と呼ばれることが知られているが、滋賀や京都の一部では「オソソ」と呼ばれるのをご存知だろうか。さらに、能登半島では「チャンペ」、北海道の広い地域で「ダンベ」など、聞いたこともない単語が女のアソコを指す言葉として流布している。
「マンジュー」というのもある。そもそもは京都で使われていたらしいが、次第に全国に広がり、今でも東北日本海沿いや九州沿岸部に根強く残っているという。「マンジュー」の由来が和菓子の「饅頭」にあるらしいなど、目から鱗の面白ネタが満載である。

 男根は全国的には「チ○ポ」が一般的だが、「チ○ボー」という所もある。秋田・青森・北海道道南の一部でだけ「カモ」ともいうなど、抱腹絶倒。

 そして、じっくり読むと興味深い。というのも性器を指す言葉は『万葉集』や『古事記』などにも違う言葉として載っており、それがどのように変化してきたか、詳細に記されているからだ。つまり、日本語を研究するなら、性器の呼び名は格好の教材というワケ。

 といっても、学校の授業では教えてくれないオトナの国語、成人向け言語学。楽しくかつ勉強になる。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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