本好きのリビドー

エンタメ・2019/12/15 06:00 / 掲載号 2019年12月19日号
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悦楽の1冊 『貴乃花 我が相撲道』石垣篤志 文藝春秋 1500円(本体価格)

★半年間の密着インタビューによる回想録

 始めに断っておくと、筆者は小学生じぶんから大の相撲ファンではあるが千代の富士が神。ゆえに身も蓋もなく申せば彼に引導を渡した貴花田(のち貴乃花)や曙が台頭して以降の平成の角界を、内心どこか白けた気分で眺めていた。ケッ、何が若貴フィーバーだよと毒づいていた嫌な高校生だった。だが、本書を一読する限り、貴乃花氏、力士としての肉体よりはるかに人生そのものが満身創痍だったのではないか。贔屓目に見ずともそう切実に痛感させる聞書だ。

 宮沢りえ氏との婚約破棄にはじまり、兄との確執、母の不倫、そして最愛の父であり師匠、元貴ノ花の二子山親方の早すぎる死(現役引退時に軽量級の体でどんな重さの相手にも正々堂々と立ち向かった雄姿をたたえたアナウンサーが思わず涙声になったのは有名)。部屋を興せば暴行を受けた弟子が暴力を振るう負の連鎖に加え、巷間取り沙汰される長男の素行と自らの離婚…圧倒的な人気と実力で相撲界に無限の貢献を果たしながら、度重なる不祥事に揺れまくる協会改革のため立ち上がるもののこっぴどい挫折を余儀なくされるまでの道のりが、活字を追うだけでもただただ労しい。

 随所に差し挟まれる貴乃花氏の言葉のあまりの純粋さ、真っすぐぶりはぜひ直に接してほしい。力士は単なるスポーツマンにあらず、古代以来の伝統と神事に従うチカラビトの側面を忘れてはならぬ、と語る高すぎる理想の追求はほとんど武士道精神に通じる凛冽ぶり。横綱時代の決まり手がほぼ寄り切りか押し出しなのに似て、一本の道しか直進できなかった男の哀しみが惻々と伝わってくる。

 アイヴァン・モリスが日本史上の悲劇の英雄を論じた名著に倣うなら、本誌元記者の手による本書を「高貴なる敗北」の記録と呼びたい。_(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】

 ベストセラーとなった黒川伊保子さんの『妻のトリセツ』(講談社)の続編。今度は夫編。それが『夫のトリセツ』(同/820円+税)だ。妻たちを対象とした夫の取り扱い説明書である。

 妻から見た夫とは、「気が利かない」「思いやりがない」「家では何もしない」。実話読者諸兄は、「だから何だよ」と言いたいだろう。だが、妻はこうした点を何とかしてほしい、できることなら変えてほしいと、日夜悶々としている。

 そこで、妻に提言しているのが、夫を癒やしてあげること。本書はこのように記している。
「(夫は)ウルトラマンである。地球に3カ月の単身赴任。たまに帰ってきて、黙ってご飯を食べて、また出掛ける。ウルトラマンは、妻に弱音を吐かなくちゃ。『今日、ゼットンにここ蹴られて、痛かったの』『大丈夫? うるちゃん、ふぅふうしてあげるね』」

 そうすれば、「きみのおかげで、僕はまた戦えるよ」と、ウルトラマンは激務に励むというわけ。

 世の中の妻の大半は夫を励ます以前に「あきらめてしまっている」のだとか。つまり本書は「あきらめないで」と、女性たちに説いている。

「そんな女房なんていね〜よ」というボヤキが聞こえてきそうだが、確かにそこまで優しくされたら、夫だってガンバル…かもしれない。

 高齢化が進み、長生きする以上は夫婦も向かい合わなければならない時代。夫たちも、避けてばかりではなく、少しは向かい合うようガンバってみては?
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

【話題の1冊】著者インタビュー 2丁拳銃・小堀裕之
ヘドロパパのヨメイゲン クズ夫に放つ嫁の名言&迷言 小学館 1,000円(本体価格)

★最近は家族サービスを頑張っています

――家に帰らない、給料を渡さないなど“クズ夫”として知られる小堀さんですが、本当に家族サービスはしないのですか?
小堀 皆さんにそう言われるので、実は最近、かなり頑張っています。もう、世間や周りの人がうるさいので…(笑)。でも、他の旦那さんに比べたら、全くできてない方だと思います。

――本書には数々の“名(迷)言”が記されています。特に印象に残っているものはありますか?
小堀 昔、僕が携帯を忘れて仕事に行った時のことです。嫁さんはチャンスとばかりに携帯を見たんです。それも送信ボックスを(笑)。相手側の甘い言葉より、僕がなんと言っているかを調べたんですね。僕は“プライバシーの侵害”という一点だけの逆ギレでその場をしのぎ、難を逃れましたが、本当に勉強になりました。それから数年後、僕が風呂に入ってる時に、4歳の長男が興味本位で僕のかばんを触り出した時に言ったメイゲン「そこには絶望しか入ってない!」ですかね。

――送信ボックスを見るんですね。確かに勉強になります(笑)。やはり、浮気を疑っていたわけですね?
小堀 僕と嫁さんは高校の同級生で、高2の夏から付き合い出しました。当時の嫁さんは今では考えられないくらいヤキモチ焼きで、僕がクラスの女子と話しているだけで怒っていました。僕は「将来、この人と結婚する」という確信を盾に、めちゃくちゃ浮気しました(笑)。そして、そのすべてが嫁さんにバレました。デビューしてしばらくして嫁さんが言ったメイゲン「風俗なんて散髪行くのと一緒!」。ん〜、確かにサッパリするという点ではそうなんだけど…(笑)。

――相方・川谷さんの妻・野々村友紀子さんからもよく怒られていますね。奥さんよりも厳しいですか?
小堀 野々村さんというのは僕らの1つ上の先輩漫才師で、今は放送作家として活躍しています。面白くない方ならいくらでも無視できるのですが、いかんせん面白い。現役時代からガシガシ怒られていましたね。もはや、奥さんよりも厳しく、怖いです。「目から血ぃ出るぐらいおもろいこと考えろ!」と怒鳴られましたが、そんなん、逆に笑えないと思うんですが…。

――“ヘドロパパ”言われながらも“家族愛”が感じられる1冊ですね。老後はどんな家庭を築きたいですか?
小堀 まぁ、今のままの距離感で十分ですね(笑)。ただ、子供たちには、嫁さんと僕の老後の生活だけはみてほしいですかね。あ、嫁さんの方は大丈夫か…(笑)
(聞き手/程原ケン)

2丁拳銃・小堀裕之(こほり・ひろゆき)
1974年生まれ、奈良県出身。’93年6月に相方の川谷修士と『2丁拳銃』を結成。’94年に爆笑BOOING第7代グランドチャンピオン、’98年にはNHK新人演芸大賞(演芸部門)大賞を受賞するなど、数々の賞を受賞。

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