片山萌美 2019年7月4日号

季節の変わり目に起こりやすい! 早期治療が必須の「扁桃炎」

掲載日時 2018年09月27日 00時00分 [健康] / 掲載号 2018年10月04日号

 発熱やノドの痛みがあり、風邪だと思い市販の薬を飲んだが、治りが悪い…。こんな場合、ノドの入り口付近の扁桃が炎症を起こした「扁桃炎」かもしれない。放置すると慢性化し、悪化すると手術が必要に。たかがノドの痛みと思わず、すぐに病院で診てもらおう。

「扁桃炎」と聞くと、ノドの痛みや発熱があるため真っ先に風邪を想像しがちだが、この病気を甘く見てはいけない。手当てが遅れると首の奥まで膿がたまり、手足が麻痺し、緊急な切開手術や長期入院が必要になる。最悪の場合、死に至るケースもあるといわれ、一度よくなっても再び重度の症状を繰り返すという厄介な病気でもある。

 扁桃炎の最も分かりやすい症状に「ノドの痛み」が挙げられるが、ここで一例を紹介しよう。

 会社員のBさん(46歳)は、食事をするときノドに違和感があった。1週間ほど前に風邪を引いたが、鼻水やクシャミはなかったものの、ノドの痛みだけが残った。食べ物を飲み込むのも辛かったが、その後、市販の薬などを飲みながら耐えていた。そして、症状改善には3週間近くかかり、ようやく収まった。

 しかし、その後も、2〜3カ月に1回ほどの割合で40度近い高熱と激しいノドの痛みに襲われるようになった。酷い時には会社を2、3日休むほどの痛みがあり、堪らず近所の耳鼻咽喉科医院へ駆け込み、診察を受けたところ「慢性扁桃炎」という診断が出された。

 治療を続けたBさんは、1年間に何度も欠勤を繰り返すようになり、閑職への異動を余儀なくされた。

 日本医科大学病院耳鼻咽喉科大久保公博主任教授は、こう説明する。
「一般的にいって扁桃炎は風邪などをきっかけに発症するケースが多い。ウイルス感染に伴い、扁桃の一つである口の奥の口蓋扁桃に溶血性連鎖球菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が感染して炎症を起こすのです。最初に扁桃炎を起こしたとき、抗生物質や鎮痛剤などを医者に処方してもらい、数日間服用すれば治り、再発は繰り返しません」
 しかし、このときに薬による十分な治療をしないと、厄介なことになる。
「口蓋扁桃にはくぼみがあるため菌が住み着きやすく、一度そこに入り込むと完全にやっつけるのは困難。そのため、2〜3カ月に1回ほどの割合で何度も扁桃炎を繰り返すようになる。これが慢性扁桃炎です」

 仕事などの都合で、なかなか医者に行けない成人は、扁桃炎から慢性扁桃炎に移行してしまうケースが珍しくない。Bさんの場合は、まさにそれだった。ただ、その後は医者とうまくコミュニケーションを取りながら処方薬を飲み続け、症状が改善できたという。

 また、別な一例を挙げると、自営業のAさん(52)の場合、病状はもっと深刻だった。咽頭の痛みと40度近い高熱のため、大学病院の耳鼻咽喉科で診察を受けた。すると「扁桃炎が重症化して、首の奥まで膿がたまっている」と言われる。

 ただちにAさんは緊急手術となり、入院生活は1カ月近くまで及んだ。その上、退院した後も扁桃炎を繰り返すなど慢性化してしまい、最終的にはノドを切開、扁桃の摘出手術を受けることになった。
「扁桃は、口を開けたときに見える口蓋垂の両脇にあります。ここは免疫細胞が集まっていて、鼻や口から気管、そして肺へ細菌が侵入するのを防ぎます。ですが、扁桃炎は風邪や体の疲れ、ストレスなどをきっかけに発症することが多く、扁桃に溶血性連鎖球菌などの細菌が感染し、それが増殖し咽頭痛、全身倦怠感、関節痛などに襲われ、仕事が出来ないほど激しい症状になります。これを放置すると、心臓や腎臓に障害が起きることもあるので、しっかりと治療する必要があります」

 こう説明してくれたのは、東京労災病院内科腎代謝担当・川嶋達哉医師だ。そして、さらにこう付け加える。

★こじらせないことが重要
「扁桃というのは、今では細菌やウイルスなどの病原菌が通る最初の部位(関門)と捉えられ、そこには常に炎症が起きるとされている。健康な時なら炎症があってもたいしたことはありませんが、風邪をひき、疲労やノドが乾燥すると細菌が増殖、炎症が酷くなります。一番怖いのは、最初は扁桃だけの炎症だったものが、扁桃の周囲、そしてノドの奥にまで広がって膿がたまり、さらに炎症が頚部から食道へ、食道から胸へと広がっていくことです。扁桃だけの炎症なら、抗生物質で対処できるかもしれませんが、扁桃の周囲まで炎症が広がり膿のたまった扁桃周囲膿瘍以降は、抗生物質に加えノドを切開し膿を取り除く手術が必要となるなど、厄介なものになります」

 また、術後も肉が腐り、細菌が繁殖して膿がたまりやすい状態になっているので、胸腔内にチューブを入れて圧力をかけ、膿をその都度吸引する胸腔ドレナージが必要になることがある。入院は数週間で、最悪の場合、死に至ることもあるという。

 さらに扁桃の炎症は、最初は“ボヤ程度”の小さなものが、どんどん大きくなっていく。これが頚部から脊推や脊髄といったところに広がり、手足にマヒが出て、寝たきりになるケースもあるのだ。
「まだ理由は完全に解明されていませんが、病巣性扁桃炎といって、扁桃炎があるだけで扁桃とは遠く離れた腎臓、皮膚、関節などに悪影響を及ぼすことが分かっています。腎炎がなかなか治らなかったが、扁桃を摘出したら腎臓の炎症も改善したというケースもあるんです」(医療ライター)

 扁桃炎の治療の場合、軽症なら抗生物質や消化剤などの薬物治療や点滴による治療もあるが、扁桃周囲膿瘍は手術の必要があるため、こじらせないことが重要となる。
「とにかく初期の風邪と似通っているので、症状だけで見分けるのは困難です。風邪らしき症状があった場合、2〜3日様子を見ても改善しない、激烈なノドの痛みがあるといったときは、躊躇しないで病院に行くべきです」(同)

 慢性扁桃炎にまでなってしまうと、時間がたてばよくなるというものではない。適切な治療をしないで放置すれば何度でも繰り返し、根本的な治療は手術しかなくなる。ノドの痛みを軽く見てはいけないのだ。
 日本列島もやっと残暑から解放された。これから涼しくなるのはいいが、季節の変わり目で起こりやすいノドの痛みには、十分注意したい。

関連タグ:目からウロコの健康術


健康新着記事

» もっと見る

季節の変わり目に起こりやすい! 早期治療が必須の「扁桃炎」

Close

WJガールオーディション

▲ PAGE TOP