片山萌美 2019年7月4日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★地獄の沙汰も金次第

掲載日時 2019年03月28日 06時00分 [社会] / 掲載号 2019年4月4日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★地獄の沙汰も金次第
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 カルロス・ゴーン被告が3月6日に保釈された。メディアは、ゴーン被告の変装に注目したが、私が気になったのは、公判が始まった森友学園の籠池泰典被告とのバランスだ。

 籠池被告は、10カ月間拘留されたのに対して、ゴーン被告は3カ月余りにすぎなかった。これはどう考えてもバランスを欠く。

 まず籠池被告は容疑の一部を認めているのに対して、ゴーン被告は全面否認だ。また、籠池被告は、1億7700万円の補助金をだまし取った容疑だが、ゴーン被告は、私的な投資の損失に対して信用保証に協力したサウジアラビアの実業家に日産の子会社から13億円を不正に送金したのと同時に、役員報酬91億円分を過少記載した容疑となっている。ゴーン被告の方が、圧倒的に額が大きい。さらに籠池被告の事件は、構造が単純で証拠隠滅の恐れがほぼないのに対して、ゴーン被告の場合は事件が世界に広がっているため、検察が十分な証拠や証言を集められていない可能性が高い。

 つまり、バランスからみたら、どう考えてもゴーン被告の方が、拘留期間が長くなってしかるべきだ。しかし、現実にはゴーン被告の拘留期間は、籠池被告の3分の1だった。原因は、明らかだ。ゴーン被告が、有能な弁護団、特に無罪請負人と呼ばれる弘中惇一郎弁護士を任命したからだ。

 私は、ゴーン被告の保釈以降、メディア出演の際に、弘中惇一郎弁護士が受け取る報酬はいくらとみられるのか、共演した弁護士に聞いてみた。

 刑事事件の弁護料は、昔はある程度の相場があったそうだが、今は独禁法に触れるということで、完全な自由価格になっているという。そして、あくまでも一般論としながらも、弘中弁護士のような超一流の弁護士の場合、着手金だけで数千万円、無罪になった場合の成功報酬は数億円というのだ。また一部の弁護士は、着手金で数億円、成功報酬は10億円を超える可能性があると話していた。

 もう一つ、弁護士たちが共通して話していたことがある。有価証券報告書の虚偽記載はともかく、会社法の特別背任に関しては、ゴーン被告が無罪を勝ち取る可能性が十分あるという。

 これは、おかしくないだろうか。籠池被告の有罪は、確実とみられる。もちろん罪を犯したのは事実だ。しかし、森友学園の問題では、8億円の値引きをして、国民に大きな損失を与えた財務官僚は、最初から不起訴で刑事責任を問われないし、会社を私物化して、私的投資の損失補填を会社にさせていたゴーン被告は、天文学的金額の弁護士報酬の支払いと引き換えに、無罪になる可能性が出てきている。

 それが資本主義社会だと言えばそれまでなのだが、刑事責任まで、金次第で決まる世の中は、私はおかしいと思う。

 今回のゴーン被告の保釈では、海外メディアが、日本の長期拘留制度を一斉に非難した。もちろん、判決が下るまでは「推定無罪」で、被告の人権は守られるべきだと私も思う。しかし、富裕層の人権だけが守られるというのは、どう考えてもおかしい。こうなったら、東京地検特捜部に頑張ってもらうしかない。万が一にも、ゴーン被告が完全無罪になったら、この国は、官僚と富裕層の特権社会になってしまうだろう。

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