RaMu 2018年12月27日号

今や胃がんは予防できる時代 「ピロリ菌」除菌でリスクを減らせ!

掲載日時 2018年11月01日 19時00分 [健康] / 掲載号 2018年11月8日号

 厚生労働省の調査によると、'17年における日本人の死因のトップはがんであり、27・9%を占める。このうち男性で2番目、女性で4番目に多いのが「胃がん」だ。

 また、国立がん研究センターの調査では、'14年において2番目に罹患数の多いがんが胃がんだった。つまり、胃がんは日本人がかかりやすく、死亡リスクも高いがんだと言える。

 その一方で、「胃がんのほとんどは予防できる」と取材した消化器内科医は口々に話す。胃がんの原因はピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)という細菌が胃に感染することにあり、ピロリ菌の有無を確認して、感染していれば除菌することで、胃がんは防げるという。

「胃がんの9割以上がピロリ菌由来であることは、医師には定説として知られていることです。胃がんとピロリ菌の関係を突き止めたのは実は日本人で、上村直実医師。彼が、ピロリ菌感染者の2.9%に胃がんが起き、感染していない人は全く胃がんにならなかったという画期的な研究結果を'01年に発表し、胃がんの原因が世界的に知られるようになりました」

 こう説明してくれたのは、自身もピロリ菌による発がんメカニズムを研究していた「さきたに内科・内視鏡クリニック」(千葉県習志野市)の崎谷康佑院長だ。

 では、ピロリ菌はどのように胃に感染し、がんの原因になるのか。過去に取材した複数の消化器内科医と崎谷院長の話をまとめると、答えはこうだ。

 ピロリ菌は4ミクロン(4/1000mm)のごく小さな細菌で、何らかの理由で5歳頃までに経口感染する。胃では食べ物を消化するため、金属をも溶かす胃酸が出されているわけだが、ピロリ菌はアルカリ性のアンモニアを作り出し、胃酸を中和して生き延びる。そして、胃の細胞や粘液を栄養源にして増殖する。

 ピロリ菌の体の表面には微細な注射針があり、ピロリ菌はこれを胃の細胞に刺して「CagA(キャグエー)」というたんぱく質を送り込む。これには胃の細胞を異常に増やしたり、細胞同士をバラバラにして炎症を起きやすくしたりする働きがある。炎症が繰り返されるとがんが起きやすくなる。

「ピロリ菌に感染するとまず胃炎が起きます。胃炎が慢性的に起こっているとやがて胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎に移行し、それが進むと胃の粘膜が腸のそれと似る腸上皮化生という状態になります。このような経過を辿った後に胃がんは起こるのです」(崎谷院長)

★まずは内視鏡で胃炎の有無確認
 では、ピロリ菌はどうすれば見つけられるのか。

 方法だけに限れば、内視鏡検査や血液検査、尿や便、呼気を調べる検査と様々だが、健康保険を利用して検査と除菌治療を受けたい場合は、必ず内視鏡検査を受ける必要がある。

 これには胃がんの早期発見を促したい厚労省の思惑が絡んでいるという。予防という観点を除けば、胃がんも多くの病気と同じように早期発見と早期治療が重要であり、全国がんセンター協議会の調査によると、ステージ1での5年生存率は97・4%と非常に高い。つまり、胃がんは早期治療で完治が見込めるがんなのだ。

「ピロリ菌を退治する目的は胃がんの予防にあり、胃がんであればピロリ菌を退治してもがんは治りません。ですから、厚労省はがんを見つけられる内視鏡検査だけに健康保険を適用させて、ピロリ菌の除菌を目的とする人にがんがあれば、見つかる仕組みを作ったのです。結果、早期胃がんの発見が大幅に増えました」(同)

 まずは内視鏡検査を行って胃炎の有無を調べる。胃炎があればピロリ菌に感染している可能性があるので、検査中に組織を取ったり、後で血液検査や呼気検査を行ったりしてピロリ菌がいるかどうかを調べる。いれば除菌治療に移行する。

 除菌治療では、医師から処方された抗菌薬と胃酸の分泌を抑える薬を1週間にわたって飲み続ける。治療を終えて4週間以降に除菌できたかどうかを確認する。1次除菌の成功率は約90%で、除菌後もピロリ菌が確認された場合は抗菌薬の種類を変えて2次除菌を行う。

 胃の内視鏡検査は、3割負担の患者で約6000円。ピロリ菌の検査と除菌を含めると1万5000円〜1万8000円の費用がかかる。

★感染率の高い中高年ほど注意
 そもそも日本人は、どれくらいピロリ菌に感染していて、検査の必要性はどれほど高いのだろうか。崎谷院長はこう語る。
「ピロリ菌の感染経路は、まだ解明されていませんが、井戸水や親から子への口移しだと考えられています。しかし、上下水道の整備によって今の子どもへの感染率は低く、10代では10%未満。その一方で年代が上がるほど感染率は高くなり、60、70代では約半数に及びます。基本的には20、30代での検査と除菌を勧めていますが、感染率と胃がんの発症率が高くなる中高年の方ほど早めに検査を受けたほうがよいでしょう」

 ここで注意したいのは、「除菌をすれば安心」ではないことだ。なぜなら、除菌した後にも胃がんになった人がいるからだ。

 崎谷院長が除菌者965人を5年間にわたり調査したところ、21人が胃がんになったという。100人に2人の割合だ。
 それでは、なぜ除菌後に胃がんになったのか。

「ピロリ菌を除菌すると胃炎は治っていきますが、いきなり赤ちゃんのようなきれいな胃になるわけではありません。状態は徐々によくなっていくわけで、まれにその最中に胃がんが起きてしまうことがあるのです。つまり、除菌した時点で胃炎が進んでいる人ほど除菌後のがんのリスクは高くなるわけで、私が30代までの除菌を推奨する理由でもあります。ですから、除菌をしても年に1度は内視鏡検査を受けて経過を観察することを勧めます」(同)

 ピロリ菌の有無を調べて、感染していれば除菌する。除菌後も定期的に内視鏡検査を受ける。こうすれば胃がんを予防でき、また仮に罹患したとしても早期に見つけられて完治を目指せる。

 また、ピロリ菌は胃がんだけでなく胃潰瘍や十二指腸潰瘍の主因でもあるので、除菌によってこれらの病気を治療したり、予防したりすることもできる。

 ピロリ菌を除菌するメリットを多くの人が知っていれば、胃がんだけでなく胃の病気全般における有病者が減っていくだろう。

関連タグ:目からウロコの健康術


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