菜乃花 2018年10月04日号

名車シビック復活も… 暗雲漂うホンダの未来予想図

掲載日時 2016年03月24日 10時00分 [社会] / 掲載号 2016年3月21日号

 2016年のF1シーズンが始まる。開幕戦は3月18日からのオーストラリアGP。昨年、7年ぶりに復帰したホンダは、世間の期待とは裏腹に完走さえままならず惨敗を喫した。
 F1と同じく就任2年目となる八郷隆弘社長もリベンジに執念を燃やしており、F1プロジェクトの総責任者に3月1日付で長谷川佑介氏を抜擢した。同氏は2002年〜'08年にF1のエンジンシステム制御の開発責任者を務めた経歴を持つ。と同時に、4月1日付で『F1担当役員』ポストを新設、松本宣之・専務執行役員が本田技術研究所の社長を兼務する。
 ご承知のように本田技術研究所は製造開発の子会社で、歴代のホンダ社長は大半が同研究所の社長経験者とあって「ホンダ社長の登竜門」の異名を持っている。そんな“大物”がF1担当として陣頭指揮すること自体、世間の目には「八郷社長がF1で勝負に出た」と映る。

 皮肉なことに昨年、上席役員9人を飛び越して抜擢された八郷社長は“登竜門”の経験者ではない。それどころか、中国での生産を統括する常務から2月末の時点で6月総会での社長就任が急遽決まり、4月1日付でいったん専務に昇格してから社長に就いた。イレギュラーな抜擢の背景には当時の伊東孝紳社長が『フィット』の発売からわずか1年で5回のリコール騒動を起こし、これが新型車の発売遅れに直結して国内販売が不振に陥ったのを機に「歴代の社長経験者が伊東社長に辞任を迫った。社長解任クーデターが真相に近い」と関係者は打ち明ける。
 「トヨタなどが増収増益を謳歌する中、ホンダは大幅減益が避けられなくなったのだから無理もありません。しかし、社長引きずり降ろしやクーデターでは世間のイメージが悪いため、禅譲を装った。伊東さんが相談役に残り、八郷社長よりも年長で伊東さんに近い役員が多数残ったのもそのためです。八郷社長? 小姑みたいなウルサ型が居残ったのだから目障りの一語に尽きる。彼らが6月に一斉退陣することで、八郷社長はやっと独自カラーが発揮できるのですが、それでも前途は多難です」

 伊東社長時代に打ちだした「2016年度に世界販売600万台」の大号令の下、ホンダは量の拡大にまい進した。短期間に新型車を相次いで投入した結果、開発や生産の現場が疲弊し、これが先に述べたフィットの5回に及ぶリコール騒動に発展した。その後遺症は今なお健在で、今年3月期も事実上の“独り負け”をアピールしている。
 何せ'15年の世界販売台数は467万台と“伊東ラッパ”の600万台には遠く及ばない。とりわけ市場が縮小する国内は前年比15%近くも落ち込んでいる。これが業績を直撃し、先に発表した第3四半期の営業利益率(四輪部門)は3.3%と業界の最低レベルに低迷するありさまだ。
 平たく言えば、利幅が極めて薄いのだ。伊東カラーを一掃した八郷社長による「再生カード」が注目されるゆえんだが、ホンダ関係者は「中国担当時代の“お友達”を2人、大抜擢して本社に呼び戻すことを除けば、何ら目新しさがない」と斬って捨てる。その2人とは、中国本部長を務める倉石誠司常務執行役員が代表権を持つ副社長に昇格し、中国の合弁会社である東風本田汽車の鈴木麻子総経理(社長に相当)がプロパーでは女性初の執行役員に就くことだ。要するに八郷社長は、政治リスクが高い中国市場を依然として主戦場の一つと位置付けている図式なのである。
 一方、国内販売トップや開発部門トップなど“伊東カラー”に染まった面々は“お払い箱”の対象になる。粛清人事というべきか、そのあたりの線引きはなかなかのものだ。

 その八郷社長が放った“奇策”が業界関係者の話題を集めている。ホンダは2010年に販売低迷を理由に『シビック』の国内生産を打ち切った。北米では製造販売を継続しており、今も高い人気を呼んでいる。これに着目した八郷社長が2年後をメドに「米国モデルで日本での生産販売に着手する」とぶち上げたのだ。
 改良型とはいえ、とうに“お役御免”となった商品を再び市場に復活投入する。通常は考えられないシナリオとあって、ホンダ系の元ディーラー経営者は辛辣だ。
 「F1は7年ぶり。シビックは、この分だと8年ぶり復活の快挙です。ヒット車不足でジリ貧に陥っているとはいえ、往年のホンダの輝きはどこへ行ったのか。過去の遺産にすがるようでは、ホンダの未来が思いやられます」

 そんな危機感は八郷社長も薄々抱いているはず。しかし、前社長時代に踏み外した歯車は簡単に戻らない。
 「陰湿な権力闘争」(関係者)の産物として異例の大抜擢を受けた八郷社長のジレンマは、当分続きそうだ。

関連タグ:本田技研工業

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