菜乃花 2018年10月04日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第272回 忌まわしき税金

掲載日時 2018年05月31日 16時00分 [政治] / 掲載号 2018年6月7日号

 2018年5月15日、日経新聞が'19年10月に予定されている消費税増税の悪影響に対する「対策」を、政府が検討していることを報じた。具体的には、住宅や自動車の購入者に減税を実施し、増税後の買い控えを防ぐという。また、商品価格の急激な上昇を防ぐ対策も、増税ショックを軽減するとのもくろみだ。

 '14年の消費税増税の際には、筆者らわずかな例外を除き、ほとんどの学者、ジャーナリスト、経済界、エコノミストたちが、
 「消費税を増税しても景気の影響は軽微」
 と嘘八百を主張し、実際に増税された途端に消費が激減した。
 '14年度の民間最終消費支出(個人消費)の実質値は、対前年比で8兆円(!)も減少。直近の実質消費('18年3月)を見ても、相変わらず対前年比マイナスで▲0.7%。
 '14年度の増税時、「消費税増税の悪影響は軽微」といったでたらめを吹聴した吉川洋、伊藤隆敏、伊藤元重、土居丈朗ら財務省の御用学者たちは、今でも政府の要職にある。当時、消費税再増税をアピールし、日本国民を貧困化させてしまったことに対し、何ら責任を取っていない。
 ここまで「朽ちた国」が、現在の日本国だ。

 しかも、'14年の増税の影響がいまだに継続していることからも分かるが、消費増税の悪影響は「長期化」する。それにも関わらず「増税後の買い控え」を防ぐという名目で、
 ○住宅ローン減税の拡充
 ○自動車関連税制の見直し
 という、泥縄対策で政府は増税路線を突き進んでいる。

 泥棒が入ってから縄を編み初めるくらいならば、泥棒に入られないように戸締りを厳重にするべきだろう。すなわち、消費税増税の凍結だ。また、個人的にはこちらのほうが問題だと思うが、政府は'19年度の増税時に、
 ○「消費税還元セール」を禁じた転嫁対策特別措置法の見直し
 ○増税後の値引きセールを解禁
 など、販売店に「値下げ」をさせることで、値上げの印象を薄れさせ、増税反動の需要減少を抑制しようとしているのだ。

 例えば、税抜き100円の商品について、増税により110円で売らなければならない際に、「消費税増税分還元セール」として、108円で売らせれば、確かに「値上げ」は目立たない。とはいえ、その分、販売店が2円、損をしているのだ。デフレ脱却を主張しながら、消費税増税を強行し、値上げ分を販売店に「値下げ」を求める。やっていることが滅茶苦茶だ。
 政府はいずれにせよ消費税増税により徴税を増やす。とはいえ、消費税増税は「強制値上げ」になるため、消費が激減する可能性が高い。というわけで、小売店に値上げ分は「飲んでくれ」と要求しているわけだ。まさに、無責任内閣である。
 増税後の需要急減が怖いのであれば、普通に消費税を凍結すれば済む話だ。この手の当たり前の政治判断すらできないとなると、わが国の未来は暗いと断言せざるを得ない。

 そもそも、消費税は「忌まわしき税金」だ。消費税は、
 「課税によって人々の経済活動が影響を受けずに、民間の資源配分をかく乱しない」
 という課税の中立性原則の観点から一番望ましい税制であるといわれている。確かに、人間は消費しなければ生きていけないため、消費税からは誰もが逃れられない。また、高所得者も低所得者も、消費をするたびに「同じ税率」の税金を徴収されるわけだ。まことに公正という話なのだが、本当にそうなのか。
 当たり前だが、どれだけ所得が高い人であっても、お腹が一杯になればそれ以上は食べられない。金持ちが消費を増やすとはいっても、限界があるのだ。というわけで、高所得者層の消費性向(所得から消費に回す割合)は低い。
 逆に、低所得者層は所得のほとんどを消費に使わざるを得ないため、消費性向は高まる。つまりは、支払った消費税が所得に占める割合を比較すると、低所得者層の方が高所得者層よりも高くなってしまうのだ。消費税は間違いなく「逆累進性」が強い、格差拡大型の税制なのだ。

 ところで、財務省が消費税率引き上げを主張する際に使われるレトリックに、
 「消費税は安定財源」
 というものがある。確かに、景気によって上下の振れ幅が大きい所得税、法人税に比べ、消費税の安定感は抜群だ。消費税は増税時('97年、'14年)に対前年比で増加する(当たり前だが)のを除くと、ほぼ「対前年比ゼロパーセント」で推移している。増えもしなければ、減りもしない。すなわち、安定財源である。
 財務省としては、景気変動の影響を受けない消費税は、実に「扱いやすい」税収になるのだろう。とはいえ、そもそも所得税や法人税が景気変動の影響を受けるのには、それなりの理由があるのだ。

 税金には、好景気の時期には高所得者から多く徴収し、支出を減らすことで景気を鎮静化し、不景気の際には、負け組である失業者や赤字企業の税負担を減らすことで復活を助けるという役割がある。いわゆる、税金のビルトインスタビライザー(埋め込まれた安定化装置)機能である。“安定財源”である消費税には、スタビライザーの機能が一切ない。失業者だろうが、赤字企業だろうが、消費税は容赦なく徴収される。
 すなわち、消費税は元々が国民の所得格差を拡大する傾向が強い上に、かつ不況期に「弱者に冷たい」税金なのである。こう言っては何だが、高所得者層は消費税が5%だろうが、8%だろうが、10%だろうが、ほとんど気にならない。とはいえ、日本国民の多数派にとっては、そうではないだろう。
 特に10%への消費税増税はまずい。理由は「10%」の消費税率では、徴収される税金がいくらなのか、誰にでも即座に計算できてしまうためだ。消費税率10%への引き上げの悪影響は、8%へ税率が引き上げられた'14年時を上回るだろう。

 忌まわしき税金である消費税は廃止するか、もしくはせめて増税凍結が必要なのである。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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