菜乃花 2018年10月04日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第203回 安倍政権の緊縮財政

掲載日時 2017年01月04日 12時00分 [政治] / 掲載号 2017年1月5・12日合併号

 国会会期末の12月14日、日本政府は公的年金の支給額を賃金に合わせて切り下げる新ルールを盛り込んだ年金制度改革法案を成立させた。この新ルールでは、現役世代の平均賃金が下がった際に、たとえ物価が上がっていたとしても賃金の下げ幅に連動して年金支給額が減らされることになる。
 当たり前だが、年金を引き下げられた年金受給者は、普通は消費という「需要」を減らすだろう。総需要の不足というデフレーションに苦しめられている国が、さらに消費が縮小する可能性が高い年金制度にシフトするわけだ。
 それ以前に現役世代の平均賃金が下がり、将来的な年金支給額が減らされるという「可能性」があるだけで、年金受給者は消費を控え預金を増やす可能性が高い。デフレからの脱却が果たせない段階での今回の年金制度改革は、明確な「デフレ化」政策なのだ。

 また、財務省が2017年度の国債発行額について「4年連続で減らす」との報道が流れている。
 左ページの図(※本誌参照)は日本政府の資金過不足の状況だ。
 資金過不足とは、政府、家計、企業といった経済主体別に「資金が余剰で他の経済主体に資金を供給している状態にある」か、もしくは「資金が不足して他の経済主体から資金を供給されている状態にある」か否かを示す指標である。
 経済主体が獲得した所得以上の支出をしている、すなわち負債が増えている(もしくは資産が減っている)場合は、資金不足。逆に、所得以下の支出しかせず、資産が増えている(もしくは負債が減っている)場合は資金過剰になる。

 本来、資本主義国で資金不足、負債拡大により、投資をすることで経済成長をけん引するべき主役は「企業」である。ところが、日本は長引くデフレにより企業の投資マインドが冷え込み、資金過剰状態が継続してしまっている。企業までもが資金過剰の状況で、政府が資金不足を縮小してしまうと、「金を使う人が減る=需要が減る」というわけで、景気は低迷せざるを得ない。
 図の通り、第2次安倍政権発足('12年12月)以降、日本政府は資金不足を減らしていっている。資金過不足のマイナスが次第に縮小しているとは、要するに借金残高が増えるペースを減らした=支出を削減した&増税したという話になる。

 実は、安倍政権は民主党政権期よりも緊縮財政なのだ。野田政権期の資金不足が40.6兆円。それに対し、2015年は17.3兆円。安倍政権が、もし野田政権期並みの資金不足を続けていてくれたならば、わが国の需要は最低でも23兆円以上も大きかった計算になる。対GDP比で、年間に4.6%の需要拡大だ。日本は余裕でデフレから脱却していたことだろう。
 とはいえ、現実の安倍政権は、資金不足を恐るべきペースで縮小していった。'14年度、'15年度、'16年度と、3年度連続で国債発行額を減らした以上、当たり前なのだが、これを'17年度以降も継続しようとしているわけである。

 安倍政権は通常予算ではデフレ脱却を果たせないどころか、デフレ化してしまうという現実を受け、毎年、補正予算を組み、何とか景気の底割れを防いでいる。
 補正予算についても、財務省は補正予算に「抜け穴」とレッテルを貼り、吉川洋東大名誉教授ら“御用学者”を使い、反補正予算のプロパガンダを開始している。

 ちなみに、
 「財務省は緊縮財政派だが、安倍総理はそれに抵抗している!」
 といった図式は成立しない。財務省と安倍総理の違いは、緊縮のペースが極端に早いか、普通に速いかの違いにすぎない。

 政府は11月29日に'17年度予算編成の基本方針を閣議決定したが、安倍総理は、
 「歳出全般にわたり、聖域なき徹底した見直しを推進する」
 との方針を強調した。

 さらに、財務省と厚生労働省は医療分野において約1000億円、介護分野で約400億円の支出削減を図る方向で調整中である。相変わらずの緊縮路線なのだ。
 しかも、日本は高齢化で医療や介護の分野における潜在需要は増えているのである。そこに、政府が適切な支出を行えば、有効需要(GDP)と化し、デフレ脱却に近づくことになる。それにもかかわらず、歳出削減が優先されている。

 安倍総理は、本当に日本のデフレ脱却を望んでいるのか。あるいは、社会保障サービスの維持について、いかに考えているのだろうか――。医療や介護分野における支出削減のしわ寄せは、もちろん現場に行く。特に、介護分野の支出削減は、ただでさえ深刻な人手不足を加速させることになる。すると、介護分野の人手不足を受け、
 「日本は外国人労働者を受け入れなければならない」
 という主張が説得力を帯び、日本の国の形を壊す外国移民政策が推進されていくことになる。

 そもそも、'14年4月の消費税増税は、「社会保障の財源を確保する」というお題目だったのではないのか? だからこその「税と社会保障の一体改革」であったはずである。
 ところが、現実の安倍政権は消費税を増税すると「同時に」、社会保障支出の削減を続けている。介護報酬は'15年度から、診療報酬は'16年度から削減が始まった。

 要するに、安倍政権は緊縮財政路線なのである。資金過不足で政府の資金不足が着実に減っている以上、ごまかしは効かない。
 安倍政権は緊縮財政路線であるという前提の上で、国民はデフレ脱却のための財政支出の拡大を求める必要がある。消費税増税の延期は、単に「緊縮財政のペースを若干緩めた」にすぎないという現実を、国民一人一人が認識しなければならない。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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