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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 日銀とアベノミクスの挫折

掲載日時 2016年03月03日 10時00分 [政治] / 掲載号 2016年3月10日号

 1月29日に日本銀行がマイナス金利を導入してからたった2週間で、日経平均は2500円も下がり、対ドル為替は10円も円高になった。日銀はもともと、円安・株高を狙っていたはずだ。それが真逆の結果を生んでしまったのは、一体なぜなのか。

 マイナス金利導入の波及効果を、日銀はこう考えていたはずだ。銀行が日銀に資金を預ける際の金利をマイナスにすれば、銀行はその資金を外貨投資や国内融資に振り向ける。さらに外貨投資が活発になれば円安に向かうから、輸出産業への追い風となる。一方で、融資が拡大すれば企業が設備投資を増やすから、GDPをダイレクトに拡大できる−−。
 ところが、この日銀の目論みは成立しなかった。まず、銀行は海外投資には向かわなかった。昨年末のゼロ金利解除以降、米国経済は変調をきたしている。欧州経済は、債務危機を引きずっている。中国経済は輸出鈍化で急減速しているし、ロシア経済は原油安でボロボロだ。つまり、世界に投資先がないのだ。
 一方、日本も10〜12月期の実質GDPがマイナス成長に陥るなど、経済は失速の状況にある。そんななかで、たとえ銀行の融資が受けられると言っても、積極的に設備投資をする企業はない。

 結局、日銀という最後の資金の引き受け手を失ってしまった銀行は、それを国債投資に振り向けた。当然、国債は値上がりする。その流れに海外投資家も乗っかって、国債がマイナス金利になるまで、暴騰してしまったのだ。
 トヨタが今年度に想定した1ドル=115円の相場を上回って進んだ円高は、日本の景気を一層冷やすことになるだろう。日銀のマイナス金利導入は、完全に裏目に出たのだ。

 もともとマイナス金利政策は、日銀の金融政策決定会合でも賛否の意見が真っ二つに割れ、黒田総裁が押し切った形だった。黒田総裁が異例の施策に踏み切ったのは、国債のタマがなくなってきたからだろう。日銀がこれ以上国債を買えば、国債価格が暴騰してしまう。その判断が正しかったことは、今回の国債価格暴騰で証明された。ただし、日銀の最大の過ちは、日本経済がすでに相当悪化していることを見抜けなかったことだ。

 それでは、日銀はどうすればよかったのだろうか。いまになって日銀は外国為替市場でドル買い・円売り介入を行って、円安誘導を目論んでいるようだが、それは一時的な効果しか持たない。
 私は、当面日銀がやるべきことは、日本株を買うことだと思う。日銀は、すでにETF(指数連動型上場投資信託受益権)の保有残高が、年間約3兆円のペースで増加するよう買入れを行っている。つまり、年に3兆円も株を買っているのだ。それを思い切って増やせばよい。
 国債と違って、いまはみなが株を売りたがっているから、タマはある。しかも、株価が安いのだから、絶好の買い場だ。もちろん株式にはリスクがあり、日銀のバランスシートを痛める可能性はある。しかし、その勇気を持つべきだ。
 もちろん、中長期的には消費が増える施策が必要となるが、それは政府が考えることだ。日銀はすぐに行動に出るべきだろう。

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