男の酒道VOL.38 ~函館からの何かしら~ リンドーズ・アビー編

ドリンク・2022-06-29 20:15
リンドーズ・アビー

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一気に暑くなりましたが、皆様、体調は大丈夫ですか?

さて、またまた新しい蒸留所から新しいウイスキーが届きました。蒸留所の名は【LINDORES ABBEY/リンドーズ アビー】。

《アビー》とは修道院の意味でございます。つまりはリンドーズ修道院。

こちらの蒸留所では2017年の12月から生産を開始しております。

非常に新しい蒸留所なのですが、歴史的背景は中々の物だったりします。修道院自体は1191年に設立されてます。*1590年に廃墟となりました。
記録に残されたスコットランドで最初のウイスキー作りは、ここの修道院で、その事からここは《ウイスキーの心の故郷》と呼ばれております。
資料によると1494年にスコットランド王ジェームス4世が、ジョン・コーズ神父に《大麦麦芽を原料としたアクアヴィータ》を注文したそうです。
さて、ここの蒸留所はざっとこんな感じです。

地区は《ローランド》、創業2017年、蒸留器は初留釜が1基、再留釜が2基の3基体制、仕込み水は現地の井戸水、年間生産量は22.5万ℓ、蒸留所ツアーも行ってます。
材料の大麦はファイフ産で現在は近隣の農場から仕入れているようです。

経営者は【ドリュー・マッケンジー・スミス】氏です。
彼の曾祖父(ひいおじいちゃん)が、この土地を手に入れ、代々農業を勤しんでいたとの事。その後、この場所がウイスキーにとって掛け替えのない場所である事を知った彼は、ここに蒸留所を造る事を決意したそうです。

そのきっかけは20年来の友人である【ジム・スワン博士】。この名を聞いた事があるでしょうか?

近代の蒸留酒ブームに裏方として世界中で大活躍されていた方です。
アイラ島の《キルホーマン》、ウェールズの《ペンダーイン》、台湾の《カバラン》、インドの《アルムット》など、この方が居なければ成功する事は無理だったでしょう。

最近リリースされるウイスキーは熟成年数が少なくてもしっかり美味しい物が多いと思いませんか?

20世紀はウイスキーは10年以上熟成させるのが当たり前でしたし、あまりにも若い物はボディも薄く当然《熟成香》も有る訳なく、到底満足いく味の物など無いに等しい状態でした。

ところが今はどうでしょう?やっとウイスキーを名乗る事を許されたばかりの3年物でも美味しいと思えるレベルの物がゴロゴロしています。

実はこの博士のおかげです。コンサルタントでもあります。彼の業績で一番有名なのは【STR樽】でしょう。

これはShaving(シェービング)、Toasting(トースティング)、Re-Charring(リチャーリング)という樽を再利用する工程の頭文字を取った特別な樽の事です。

通常はお酒に触れていた部位はそのまま再利用されていました、と言うかその部位こそが欲しい部位でした。そのキャラがお酒に入るので。

しかしながら彼は逆にその部位を《削り》《炙り》《焼きを入れる》と言う事をしました。その結果、高度に熟成しやすい樽が誕生する事となりました。

この博士の熱心な勧めもあり2013年にリンドーズアビーのプロジェクト開始。

2017年に蒸留所とビジターセンターが完成しました。が、ここのウイスキーを飲むこと無く、【ジム・スワン博士】は、この年にお亡くなりになりました。
ウイスキーの心の故郷が、彼の最後の仕事だったのは、決して偶然などでは無いと思います。

皆も先人達に感謝をしつつ美味しいお酒飲みましょうね。

監修
Bar ADDICT
〒040-0035 北海道函館市松風町20‐1
ライジングビル2F

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