安部元首相銃撃 いまや悪意や呪いですら誰も振り向いてくれない時代

政治・2022-07-21 13:20
安部元首相銃撃 いまや悪意や呪いですら誰も振り向いてくれない時代
閉じる

この前日本の元首相を銃殺するという、歴史上に残る事件が起こった。容疑者は母親がハマったという宗教団体への憎悪を語るが、安部元首相にはそれほどの憎悪を感じておらず、また日本を変えてやろうという政治犯でもない。

まさに最近よく聞く犯人の「だれでもよかった」系という感覚に近い。

この容疑者から感じるのは近年たまに聞く「死刑になりたかった」や「刑務所に戻りたかった」といった犯罪に近いような、無気力な感じがするのだ。あるいは拡大自殺(道連れ自殺)に近いものがあるのではないだろうか?

容疑者の母親が、宗教団体に入れあげて破産したのがいまから約20年前。その後3年間海上自衛隊に務めていたというが、そのあとの17年もの長い期間、宗教団体や母親に復讐することもなかった。

この17年もの間が最後に倉庫で働いていたということ以外よくわからない。その間の友人とかもまだ出てこない。友人を作らなかったのか、作れなかったのか・・・

また、2019年の京アニ放火殺人事件や、ネットカフェ立てこもり事件のような、容疑者がどこか成長しきれていない・何か大きく欠落したまま大人になってしまい、【何となく思いついたからやってしまった】くらいのふわふわ感すら感じるのだ。

【大した恨みもないけど】【ちょっと目立ちたかったから】【死のうと思ったので道連れに】これからは、そんな殺人や、道連れ自殺が増えてくるのではないだろうか?

彼らはその悪意や世間への恨み・呪いなど、さらに犯行予告まがいのことを、ツイッターなどに書くかもしれない。しかし近年、SNSなどネットで見られるのは、そういった激しい言葉は【ネットですら無視される】という現象が起きつつある。

ツイッターではミュートという機能があって、フォロー解除したりブロックしたりすることなく、特定のアカウントのツイートをタイムラインに表示しないようにできる機能だ。ミュートされたことは書いた本人にはわからない。

ツイッターで世間の人に激しい憎悪をまき散らしているつもりでも、実はみんな飛ばして読まないかミュートされていてほとんど読まれていないという現象が、最近起きているらしい。

安部元首相銃撃の容疑者も、ツイッターにいろいろと書いていたようだが、特に強い反応はなかったようだ。

10年前20年前のツイッターや匿名掲示板なら、悪意や憎悪、呪詛を書き込めば、どこかの誰かが相手にしてくれたのに、もうそんな時代すらも終わりつつあるのかも知れない。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

関連記事
関連タグ
政治新着記事