「おぐらが斬る!」戦後もっとも愛され、そして憎まれた安倍元総理とは何者だったのか?

社会・2023-07-07 20:58
「おぐらが斬る!」戦後もっとも愛され、そして憎まれた安倍元総理とは何者だったのか?
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安倍晋三元総理が暗殺されて1年が経つ。安倍元総理は良きにつけ悪しきにつけ間違いなく“時代を代表する宰相”であった。

と、同時に安倍元総理の成果や賛否は、ものの見事に二つに分かれる。

安倍元総理と言えばアベノミクスだが、一面では確かに成功した。ただ、安倍元総理が掲げた主要な経済目標は達成できず、国民の多くは景気が良くなったとは体感できずじまいであった。

他に安倍元総理で目立ったのは、外交の強さだろう。特に日米同盟を対等なものにしようとした。日米同盟は元々対等ではない。いうまでもなく戦勝国と敗戦国の同盟であるからだ。

2016年5月、当時の安倍総理は、オバマ米大統領の広島訪問に成功している。現役の米大統領が、被爆地を訪問したのは初めてのことであった。

同年12月、今度は安倍元総理が真珠湾に慰霊訪問を行い、そのときオバマ元米大統領も同行した。日米首脳がそろって同地を訪れたのは初めてのことであった。

これは日米同盟が対等に近づいた象徴的な出来事と言っていいだろう。

安倍政権以前の民主党政権時代、日米関係はギクシャクしたものだった。

それが2014年にオバマ大統領が国賓として来日し、翌15年4月には、安倍総理が日本の総理大臣として、初めて米議会の上下両院で演説を行った。
同15年9月には安全保障関連法を成立させ日米同盟の抑止力強化に成功し、16年に伊勢志摩サミットを成功させた。オバマ大統領が広島を訪問したのはこのときだ。

そして16年11月に誰も予想していなかったトランプ氏が大統領に当選する。すると大統領当選後8日後という異例の速さで会談し、その後両者の関係は驚くほど良くなった。

ほとんどの国家首脳の場合、外交の成果が自国の選挙に影響するということはあまりない。しかし安倍元総理の場合、外交の成果が自民一強、アベ一強の一部を支えていた稀有な宰相であった。

安倍内閣には第一次と第二次がある。第一次アベ内閣は閣僚の失言や不祥事に加え持病の悪化で、約1年で終わった。

そして2012年12月に2度目の総理大臣に返り咲いた。日本の総理大臣の中で2度総理になったのは安倍晋三と吉田茂だけだ。このとき安倍晋三は最強の総理として戻って来た。6回の国政選挙に一度も負けなかった。鬼門の消費増税を2回やっても負けないのだ。おそらく国民にもっとも愛された総理であっただろう。

その強さに手を貸していたのが野党であった。内部分裂やモリカケ桜に執着しすぎて「結局自民党に入れるしかない」と離れていった有権者は少なくない。それだけに野党や野党支持者は安倍晋三を激しく憎んだ。

そしてまた持病が悪くなり、2020年9月に辞任し、2022年7月8日に銃撃されこの世を去った。

憲政史上最長の総理であり、記録にも記憶にも、もっとも残る総理大臣であったことは間違いない。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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