「おぐらが斬る!」犯罪が年々減少していたわけ

社会・2023-09-23 10:48
「おぐらが斬る!」犯罪が年々減少していたわけ
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2022年の刑法犯認知件数が、なんと20年ぶりに増加したという。これまでのアンケート調査でも「治安が悪くなった」回答が多く、これは20年間変わらない。

実際、治安は良くなっているのに「悪くなっている」と感じることを「体感治安」というが、犯罪が減り続けた20年間も人々はそう思い防犯に気をつけてきたから、犯罪が減ったとも言える。

また、殺人などの凶悪犯罪も年々減っているのだが、その原因の一つに、少子化の影響があるという。

そもそも昔から犯罪の主な担い手は10代20代の若者なのだ。少子高齢化で若者が減り、高齢者が増えれば、必然的に犯罪は減るというわけだ。

さて、戦後刑法犯認知件数がもっとも多かったは2002年前後である。いまから約20年前だが、この時期に日本の犯罪が増えたことについて、少し述べてみたい。

実は2002年前後の犯罪ピークのとき、殺人事件も増えていたのかというと、そんなことはない。殺人事件は1954年がもっとも多く、多少の増減はあるものの、戦後一貫して減り続けている。

ここで面白い推測ができる。もっとも暗数が少ないであろう殺人事件を正確に近い数値とすると。日本は1954年から年々、平和になっているのかも知れないということだ。

さて、2002年前後に犯罪がピークだったのは、その頃にいろいろな犯罪被害を警察に通報・相談する人が増えたからだ。

例えば40年前だと、ストーカーや児童虐待、DVで警察に通報・相談する人はあまりいなかった。社会的にいまほど問題視されていなかったからだ。

ストーカーは1999年、ストーカー行為を受けていた女子大生が殺される事件が起き、一気にその認知度が高まった。

児童虐待にしても、日本人が関心をしめすようになったのは90年代に入ってからだ。

つまりこれまで警察に相談も通報もされなかった事件が、警察に寄せられ認知されるようになったわけだ。

また警察庁も1999年に積極的に被害者相談に応ずるよう通達を出している。するとこれまで埋もれていた事件も認知されることになった。2002年に犯罪件数が戦後最多になることで市民の防犯意識が高まり、さらに少子高齢化も相まって犯罪認知件数も減ってきたようだ。

このように犯罪の件数は、警察に認知されるかどうかによる。児童虐待は年々増えているが、専門家の中には「実際は増えていない。これまで見逃されてきたものが表に出るようになっただけ」という人もいるくらいだ。

さて、2022年、つまり昨年20年ぶりに犯罪が増えたのは、新型コロナの行動制限緩和と関係があるらしい。

増えたのは自転車盗など街頭犯罪、特殊詐欺、児童虐待、DVなどなど。

今後、犯罪を減らす方法の一つとして、自分が犯罪者にならないことと、犯罪被害者にならないようにすることだ。皆さん、ご用心ご用心。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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