「おぐらが斬る!」犯罪心理学 しろうと理論に気をつけろ

社会・2023-05-25 23:30
「おぐらが斬る!」犯罪心理学 しろうと理論に気をつけろ
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ときどき世間を騒がす犯罪が起こる。その犯人が逮捕されると、その犯人はどんな人だったのかと、マスコミが調べ報道する。「どんな家庭で育ったのか?」「学校での態度はどうだったのか?」「趣味は何だったのか?」などなどだ。

むかし失笑してしまったのが「秋葉原通り魔事件の犯人加藤智大(ともひろ)は、エヴァンゲリオンを観ていた‼」という報道があったときだ。

アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』は、1995年から現在に至るまで大ヒットしている作品で、主人公は気の弱い14歳の少年という設定。エヴァンゲリオンはこれまでどれだけ多くの人が観てきたかわからない。

この記事を書いた記者は「エヴァンゲリオン」=「オタク」=「凶悪犯罪をするかもしれない」という偏見を持っていたに違いない。

こういった理論を犯罪心理学では「しろうと理論」と言う。実はこの「しろうと理論」は犯罪防止という意味では、あまり役に立たないどころか有害と考えられている。

例えば大衆が「貧困家庭の子は犯罪者になりやすい」というしろうと理論を信じてしまい、それらの人にレッテルを貼り差別して、貧困家庭の子を追い詰めていきついには貧困家庭から犯罪者が多く出るようになったとしたら、このしろうと理論を信じた大衆が犯罪者を生んでしまったということになる。

「子どもを甘やかすと犯罪者になる」というのもしかりで、厳しく育てると思春期までは「いい子」に育つ。自分が嫌でも「いい子」にしていれば怒られずにすむからだ。

しかし思春期を迎え体力が親に近づいてくると、「いい子」はやめて中には非行に走る子もいる。それまでは「いい子」だったのに家庭内暴力という形で復讐される親もいる。子どもによる家庭内暴力は、元「いい子」による場合が多いのだ。

犯罪心理学には「社会的絆理論」というものがある。

人が犯罪をしないのは社会との絆があるからで、その絆が弱まったときや、壊れたときに逸脱行為が起きるという説だ。

親や身近な人に対する愛情があり、愛する人に悲しい思いをさせたくないという思いがあれば、犯罪を行うことを思いとどまるはず。しかし親から甘えを許されず育てられると、親に愛情を感じられなくなってしまう。甘えとは愛情や信頼の証しでもあるからだ。

社会的絆理論は他にも社会との絆が犯罪を防止すると考え、犯罪を行って失うものの大きさや、社会とのつながりなどが犯罪を防止するとする説だが、最近の「無敵の人」(社会的に失うものがないため、躊躇(ちゅうちょ)なく凶悪犯罪に及んでしまう者)による凶悪犯罪は、まさに社会的絆理論と合致する。

だとすると、犯罪防止には個と社会との絆、関係が重要であり、しろうと理論のような決めつけを避けるのも大切であろう。

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