新型コロナ影響の自殺者8千人というもうひとつの現実

社会・2022-09-12 23:03
新型コロナ影響の自殺者8千人というもうひとつの現実
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東京大学のチームが2020年3月~2022年6月までの間に新型コロナの影響で自殺した人が約8千人に上るという試算を発表した。もっとも多かったのは20代の女性だという。理由としては、やはり経済的影響であるらしい。中でも女性は非正規雇用が多く、経済的な影響を受けやすい。さらに行動制限のため孤独や孤立に追い込まれている可能性があるそうだ。

2020年にコロナが流行り出して、世界はパニックになった。発生した場所が中国であったため、欧米では東アジア人差別が起こり、中には殴られるなど暴力を受ける人までいた。日本では、志村けんさんという国民的スターが感染し死亡。日本中がショックを受け、さらに竹内結子さんや三浦春馬さんといった有名人が自殺した。竹内さん、三浦さんの自殺には新型コロナによる仕事の減少や行動制限等が深く影響しているのではないかと言われている。

竹内さんが自殺したのは2020年9月だが、この年の8月には自殺が急増し、特に女性の自殺が増えていることが注目された。実は2020年7月までは、自殺は減っていたのだ。それも2010年くらいから年々減少を続けていた。それが2020年8月に急増。

原因は2020年4月に、戦後初の「緊急事態宣言」が発令され「戦後最大の危機に直面している」と言われ、さらに「人の接触は8割削減」を求められた。

人々はコロナが出現後、しばらく我慢を続けていたが、経済的にも精神的にも8月くらいから耐え切れない人たちが増えてきたということらしい。当時、国民の緊張はすごく電車で軽く咳をしただけで周りから人がいなくなるほどであった。

ちなみに最初に緊急事態宣言が出された2020年4月9日の東京都の新規感染者は、87人であった。

あれから2年半がたち、これを書いている2022年9月12日の東京都の新規感染者数は5654人。もちろん変異株の違いで重症化率は低い。しかし死亡者は24人。

ただこの死亡者数というのが、本当に新型コロナが直接の原因かどうかはわからない。先月、愛知県の大村知事は記者会見で「オミクロンになってから県でコロナで直接死んだ人はいない」と言い、神奈川県でも「主たる死因がコロナだと判断できるのは53.2%。死因をコロナ以外の疾患や老衰と判断できるのが32.1%」であるという。つまりいまの死亡者数が、あまり信用できなくなってしまっているのだ。

その一方で、コロナによって自殺者は増えた。特に女性は2年連続増だ。日本では失業率が上がると自殺者が増えてきた。つまり経済と自殺は相関関係があるのだ。

物価が急速に上がっているいま、このままの政策だと、非正規雇用の若い女性など弱い立場の人がますます自殺に追い込まれることになる。自殺未遂者は実際の自殺者の20倍ほどいるとされ、未遂までいかないが自殺を考える人はさらに何十倍何百倍も多い。

政府はコロナで死亡した人だけではなく、コロナで自殺した8千人の重さも考えてほしい。新型コロナの死亡平均年齢は81歳以上。これは寿命ともいえるかもしれない。しかし自殺で亡くなる若い人は寿命とはいえないだろう。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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