「おぐらが斬る!」京アニ放火殺人 責任能力の有無が争点に そもそも責任能力ってなんだ?

社会・2023-09-06 20:16
「おぐらが斬る!」京アニ放火殺人 責任能力の有無が争点に そもそも責任能力ってなんだ?
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2019年7月、京都アニメーションのスタジオが、青葉真司被告(45)に放火され、36人が死亡し32人が重軽傷を負う大惨事となった。

京都地検は、青葉被告に鑑定留置(精神鑑定)を行い「完全責任能力があり、筋違いの恨みによる復讐だ」判断し起訴。初公判となった。

弁護側は「心神喪失で責任能力がなく無罪。罪を問うとしても心神耗弱として減刑するべき」と主張している。

ではよく言われる責任能力とは何か?

責任能力は程度に応じて、完全責任能力、心神耗弱(こうじゃく)、心神喪失(そうしつ)の3つに分類される。

「完全責任能力」とは刑事責任を問えるだけの責任能力があるということ。

「心神耗弱」とは、精神障害のせいで善悪の判断力などが著しく低くなった状態のため、刑法によって減刑される。

「心神喪失」とは、精神障害のせいで、善悪を全く判断できない状態のため、犯罪行為をしても無罪となる。

ここでいう「精神障害」のほとんどが自分の言動に責任が取れないほどの統合失調症である。ただし統合失調症だからといって、すべて無罪になるわけではない。

令和3年版の犯罪白書によると、令和2年中に全国で開かれた刑事裁判の第一審で、心神喪失を理由として無罪が言い渡されたのはたったの5人であった。

つまり、心神喪失が認められる可能性は極めて少ない。犯行時に善悪の判断がつかないほどおかしくなっていないと無罪にはならないようだ。

そして心神喪失で無罪になったからといって釈放されるわけではない。精神科病院に強制入院となる。

さて、京アニ事件の青葉被告だが、以前にコンビニ強盗を起こして刑務所に入り、一説によるとそこで統合失調症と診断され、障害者手帳も発行されているという。

では責任能力がないかというと、新幹線に乗って京都へ行き、ガソリンや包丁を買うなど計画を実行する能力はあった。

また2009年に大阪のパチンコ屋で、統合失調症患者が青葉被告と同じくガソリンをまいて放火、客や店員5人が死亡、10人が重軽傷を負う事件があった。

このときの判決は「犯行の端緒は精神疾患によってもたらされたものである」としながら、ガソリンの購入など、決めたことを合理的に行動し、実行しているので、完全責任能力があったとして、2016年に最高裁で死刑が確定している。

この先例と同じく青葉被告には極刑が処されると推測する。前述したように心神喪失により無罪というのは、極めて少ないのだ。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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