北朝鮮「中距離弾道ミサイル」発射の理由

社会・2022-10-04 18:53
北朝鮮「中距離弾道ミサイル」発射の理由
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ここのところ北朝鮮からの弾道ミサイルが盛んに発射されている。今年に入ってから失敗も含めると30発以上も発射しているのだ。このお金があれば、北朝鮮の食糧不足は解決らしいが、かの国は2千700万人の人民の飢えよりも、ミサイル実験が大切らしい。

さて、10月4日の弾道ミサイルは津軽海峡を通過したが、日本上空を通過したのは2017年以来で、5年ぶり7回目となる。10月4日の弾道ミサイルの飛行距離は約4600キロ。過去最長であり、米軍の重要拠点であるグアムを射程に収めることができる。

ちょうど9月30日から日本海で、日米韓共同軍事訓練を実施したタイミングだ。この訓練は北朝鮮の潜水艦を探知する訓練であった。

日本海で日米韓3か国が共同訓練を実施したのも2017年以来だ。明らかにこの日米韓軍事訓練を意識してのことだろう。

気になるのは、過去、日米韓や米韓の軍事訓練中にミサイルを発射するということはなく、これまで北朝鮮は、日米韓や米韓軍事訓練を行ったとき、北朝鮮軍と国民に「準戦時状態」を発令し、備えさせてきた。

しかし今回それをやらなかった。ということは、おそらく北朝鮮国内の食料やエネルギー事情がそれどころではないからかもしれない。

北朝鮮にしてみれば、世界の目がウクライナに向き、国連が機能不全を起こしている今のうちに、ミサイルの発射実験をやっておきたい。同時に日米韓を威嚇しておきたいというところであろう。

北朝鮮の世界軍事力ランキングは30位。アメリカは1位、日本は5位、韓国6位と比べて大きく劣っている。ロシアの核の脅しが有効なのを目の当たりにしている北朝鮮にとって、核ミサイルこそ国の寄る辺であると思っているに違いない。

北朝鮮は先月9日に、米韓が金正恩を暗殺する「斬首作戦」を警戒し、戦時以外でも核による先制攻撃ができるように法制化をしたばかりだ。今年に入ってのミサイルの多発は、そんな金正恩の“おびえ”も入っているのかもしれない。

ちなみになぜ北朝鮮は日本海、もしくは津軽海峡を通過して太平洋にミサイルを撃ち込むのか? まず北朝鮮の体制を維持するために核を持ち、ミサイル実験をするしかないと思っていることが一つ。

もう一つは、ミサイル(ロケット)というのは、東方向に打つのがもっとも適しているからだ。これは地球が東に向けて自転をする力を利用するためで、実験のコストが全然違ってくる。つまり北朝鮮にとってミサイル実験のためには、日本海か日本列島を通過させ太平洋に落とすしかないのである。よって、これからも日本海や列島を通過させるミサイル実験は止まらないだろう。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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