中国と話ができる政治家を媚中派という愚
社会・2022-09-27 18:51いまや日中関係は犬猿の仲といってもいい。
中国と交流が深い二階元幹事長を「媚中派」と言う人も多いそうだ。しかし二階氏はそういう批判に対して「言ってるお前は中国の誰と話ができるんだ」と答えた。
ごもっともな意見である。中国は永遠に引っ越さない隣国であると同時に、世界2位の経済大国・世界3位の軍事大国である。さらに日本にとって中国は最大の貿易相手国であると同時に、仮想敵国でもある。
これほど重要な国と話ができる政治家を排除しようとするのはまさに愚の骨頂、ばかの極みであろう。
日本は近代に、2度大きな変革を経験した。明治維新と太平洋戦争敗戦である。この2つの大変革の前に、同じような愚の骨頂を行う人たちがいた。
明治維新前、ロシア帝国や米国などがしきりに日本近海に現れるようになり、攘夷運動が起こる。
攘夷(じょうい)とは「夷(い・外国人)を攘(はら)え」という意味で「このままでは日本は西洋列強の植民地にされてしまう」と危機意識を持った知識階級の人たちは、西洋の情報や進んだ技術を得ないといけないと考えた。
いまや愛国者の鏡とされている吉田松陰などがそうだ。吉田松陰は、国禁を犯してまで米国に行って学ぼうと密航をくわだてたが失敗し、刑死している。松陰の弟子であり、長州藩の攘夷運動のリーダーであった高杉晋作は、馬関(下関)を開港し、海外と交易して富を増やし、倒幕の資金にしようと考えたこともある。
しかし圧倒的多数のものを考えられない攘夷論者は、単純に外国人や外国から学ぼうとか、交流をしようとする人を排斥すればいいと、単純に考えた。
結果、吉田松陰の師である佐久間象山を暗殺したり、攘夷藩として先行していた長州藩は、下関海峡を通る外国船を攻撃、報復に英・米・仏・オランダの連合艦隊にあっさりと完敗している。
薩摩藩は、生麦村でイギリス人を斬った報復として、イギリス艦隊7隻が鹿児島に来て薩英戦争が起こり、やはりあっさり完敗。
攘夷藩の両国は、ぶん殴られて初めて自分の弱さを知り、ようやく西洋に学ぼうとした。
2度目は、太平洋戦争前、日本人は自主的に敵性語である英語を禁止する。1941年、日本陸軍は予科士官学校などの入試から英語を撤廃、入校後の英語教育も大幅に短縮・廃止した。
あほの極みとはこのことで、戦争になるともっとも必要なのは敵の情報であるのに、その情報源を学ぶことを放棄してしまったのだ。
一方、米国はまったく逆で、同時期に士官学校で日本語教育を開始し、数多くの将校や下士官に日本語を叩きこみ、日本の研究をしている。
繰り返しになるが、中国と話ができる政治家を「媚中派」と言い排斥しようとする人は、世界2位の経済大国、世界3位の軍事大国との情報を切り、意見交換ができる政治家などいらないと言っているのに等しい。
なんとなく幕末の攘夷運動や戦前戦中の敵性語排斥運動をした人たちに似ているのではないだろうか?
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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