政治家の警護は想像以上に難しく政治家はスキだらけにならざるを得ない

政治・2022-08-27 10:17
政治家の警護は想像以上に難しく政治家はスキだらけにならざるを得ない
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安部元首相が銃撃され、警察庁長官と奈良県警本部長が辞任した。警察は、より一層きびしく警護をするよう体制を見直すという。

警視庁にはSPという人たちがいる。セキュリティポリスの略語で、政府や外国の要人警護を担当する人たちだ。SPは1975年、佐藤栄作元首相の国葬のとき、当時の首相であった三木武夫が、右翼団体の党員にボカリと殴られたことがキッカケで創設された。

この三木首相殴打事件は、いまでもユーチューブで観ることができる。立っている三木首相の後ろからタッタッタと右翼の男が走ってきて、三木首相の背中をチョンと叩き「ん?」と横を向いた瞬間に顎を殴ったのだ。三木首相はノックダウンである。

映像を見る限り、誰もあやしまず警戒もしていなかったように見える。ショックを受けた警察がアメリカのシークレットサービスをお手本に要人警護専門チームを作ったのがSPだ。

さて、筆者は2度ほど大臣警護中のSPに接したことがある。一度目は筆者が以前ある地方の町おこしとして、お化け屋敷のリーダーをやっていたことがあり、そこに総理候補とも言われる女性大臣が地元後援者と遊びにきたことがあった。数名のSPもいた。普通大臣につくSPは2名というから、あとは県警警備員だったのかもしれない。

ご存じ通りのお化け屋敷は暗く、お化け役が客に襲い掛かる“フリ”をする。SPとしてはお化け屋敷内の要所(お化け役が襲う場所や怖いポイントなど)に警護を配置し、大臣を取り囲んで警護をしたいという。しかし屈強なSPに囲まれてお化け屋敷に入ったところで、大臣はおもしろくもなんともないだろう。

ということでSPと相談し、SPの皆さんにはバックヤードなどに回ってもらうことにした。そのあとその女性大臣と少しお話させていただいたが、そのとき周囲にSPがいた記憶はない。おそらくやや離れてガードしていたのだろう。

2度目は、ある立食パーティーに出席していたとき、ある大臣が招待されており、こちらも大臣の周囲には数人のSPが警護をしていた。大臣はほろ酔いで歩き回り、いろいろな方とお話をしており、筆者も大臣とお話させていただき、何人かの友人たちと一緒に写真も撮らせていただいた。後で友人の一人が「大臣って意外とスキだらけだ」とつぶやいたのを覚えている。

またそのとき筆者は、SPの一人に「大変ですね」と話しかけてみた。通常、選挙演説のときなどは、SPは怖い顔して周囲を威嚇するように立っているものだが、そのときは立食パーティー中であり、柔和な顔をして「まあ」とだけ答えてくれた。大臣からみんなが楽しんでいるパーティー中の怖い顔は、禁止されていたのかもしれない。

わずかこれだけの筆者の経験だが、常に不特定多数と会い握手をし、ツーショット写真を撮る政治家を、完全に護るのはほとんど不可能に近いと思ったものだ。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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