「おぐらが斬る!」ジャニーズ・猿之助事件を報じないテレビの闇

エンタメ・2023-06-05 23:10
「おぐらが斬る!」ジャニーズ・猿之助事件を報じないテレビの闇
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ジャニー喜多川氏の性加害を訴える人が続々と増えてきた。市川猿之助氏の心中事件も、少しずつだが、裏側が見えてきた。

ところが・・・だ。

おもしろいくらいにテレビの情報番組はそのことを伝えない。猿之助氏の場合だと、猿之助氏の代役にダレソレの息子を使って、「それはそれは素晴らしいお芝居でカンドーしましたー」などと歌舞伎ファンのお言葉を伝えるのみ。

だが、現実に起こっているのは、自殺ほう助という実の親の死を手伝うというとても重い事件であり、さらに猿之助氏の同性の恋人の存在や、遺産の話などはなかったかのように放送されない。

ジャニー喜多川氏の性加害の場合、50年以上もの長期間、数百人の少年たちが性被害を受けており、もっと早く問題視をしていれば、かなりの被害者を出さずに済んだのに、テレビ各局はなにもやらなかった。

テレビ局がジャニー喜多川氏の性加害について触れなかったのは、性加害を知っていても、ジャニーズ事務所の圧力に負けたからとも言える。

1999年、『週刊文春』がジャニー喜多川氏の性的虐待行為を報じ、ジャニーズ事務所が名誉棄損で訴えたが、2004年、裁判所は「報道は事実である」とした。

しかしこのときの事件を日本のテレビ局は見事に無視し、まったく報道しなかった。テレビ各局は、未成年への性的虐待という犯罪を隠蔽し、ジャニーズ事務所のタレントを使い続けることを選択したのだ。

自らを行政・立法・司法の三者の権力に加えて『第四の権力』と称するマスコミが、性犯罪を隠すことを選んだのだ。

マスコミの中でも「芸能マスコミ」と言われる分野があり、戦後ずっと「芸能界」と「芸能マスコミ」、「テレビ局」はお互いに忖度しながら生きてきた。

芸能界と暴力団の関係が報道され、関係があったとされる芸能人がテレビから干されるようになったのは、つい最近になってからだ。

これは歌舞伎界も同じだ。「歌舞伎界は治外法権」という言葉があるように、歌舞伎役者が不祥事を起こしても、ワイドショーはほとんど報道せず、テレビ番組はその役者を使い続けてきた。昭和の時代はそれが普通。平成・令和になってそんな闇も少しずつ暴かれるようになってきた。

日本のテレビ局は、常に他のテレビ局を横目でみながら、護送船団方式で足並みを揃えてきた。もし英国のBBC(英国放送協会)がジャニーズのスキャンダルを放映しなければ、いまでも隠蔽されたままだったろう。結局この問題が表に出たのは、海外テレビの外圧があったからだ。

猿之助氏の場合、自殺問題が絡んでいるのでテレビ局も深掘りしづらい事情もあるのだろうが、もし一家心中という事件にならなければ、猿之助氏の性加害などの週刊誌スクープだけだと、テレビ各局の報道はなかったかもしれない。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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