平和のために戦争の勉強をしよう 日中戦争はなぜ負けた

エンタメ・2022-09-18 18:56
平和のために戦争の勉強をしよう 日中戦争はなぜ負けた
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77年前、日本は戦争に負けました。どこの国に負けたのか? ほとんどの日本人はアメリカに負けたと思っていますが、それは必ずしも正しくありません。日本は米・英・仏・ソ連・中華民国を中心とした「連合国」と戦争をして負けたのです。

敗戦後、日本は戦争の記憶を消したいためか、なぜか「戦争のことを考えると戦争が起こる」とか思っている人が多くいて、マスコミなどでも敗戦後の20世紀後半はそう主張する人たちが中心になり、「平和のために戦争を研究しよう」という人を「軍国主義者」と決めつけて避けていました。

そのせいか、それなりの大学教育を受けた人でも、いまだに「日本とオーストラリアは戦争をしていない」とか「日本とドイツは戦争をしたことがない」と思っている人がたくさんいます。

しかし史実として太平洋戦争中、日本軍は連合国側であったオーストラリア本土を100回前後空襲していますし、第一次世界大戦で日本はドイツへ宣戦布告し、ドイツが権益を持つ中国の租借地青島(チンタオ)を攻撃し、日独戦争が起きています。

さて、太平洋戦争時代の日中戦争ですが、1937年(昭和12)7月に始まり、1945年8月日本の降伏で終わりました。その裏側にはいろいろあるのです。これから述べるのはその一つ・・・

日中戦争がはじまる2年前、中国の天才的思想家胡適(こせき・こてき)が、日中戦争を予言し、「日中切腹 中国解釈論」を発表しています。これは

「いま日本と戦えるのはアメリカとソ連しかないが、まだ軍備が整っていない。その隙に日本は中国を攻めてくるだろう。中国が日本との戦争をまずは正面から引き受け、2~3年間、負け続け、沿岸の都市は占領されるが、日本軍は満州や日本本土にいる兵を中国に大動員させねばならず、ソ連はつけ込む機会が来たと判断する。
さらに世界中の人が中国に同情し、英米および香港、フィリピンが切迫した脅威を感じ、極東における居留民と利益を守ろうと英米は軍を派遣せざるをえなくなる。そして最終的には中国が勝つ。いま日本は切腹の道を歩んでいる。介錯をするのは中国だ」

中国は「戦闘」に負けても「最終的に戦略で戦争に勝てればよい。それには米英ソを巻き込む」という論で、当初は中華民国政府に否定されましたが、結果的には胡適の思惑通りになりました。日本陸軍100万人が中国に配備され、日本の戦力は分断。太平洋戦争で連合国と戦い力尽きて敗戦します。日中戦争において日本軍の死者は41万人、中国は1000万人の犠牲者を出しましたが、結果は日本の完敗です。

日中戦争で日本は連戦連勝し、日本のマスコミや国民はいい気になっていましたが、戦争には表に見えない深慮熟考があるもの。それを読めないと、巻き込まれたり引きずり込まれたりします。日本の大学では、軍事学(戦争学)を学術的な領域として容認しておらず、せいぜい防衛大学で防衛学の講義が行われている程度。平和学を教える大学も少ないのが現状。平和を望む人ほど戦争を学ぶべきだと思うのですが・・・

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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