「おぐらが斬る!」完全に打倒か、どこかで妥協か、戦争の終わらせ方
社会・2023-07-03 23:57かつて筆者が「平和について考えるシンポジウム」のような集会に出席したとき、ぼくが「戦争についてもっと研究すべきなんじゃないか」とか「戦争がはじまってしまったとき、どうやったら戦争を終わらせることができるのかを研究すべきだ」と発言した。
すると自称「平和主義者」と称するご老人が、大いにお怒りになり「戦争なんてものを考えること自体が、間違っているんだ」とおっしゃり、あきれ返ったことがある。
平和について考えるというのは戦争について考えるということが、この自称「平和主義者」さんには理解できないらしい。
さて、戦争の終わらせ方だが防衛省防衛研究所主任研究官の千々和泰明氏によると、「現代の犠牲」と「将来の危険」を天秤にかけるという。
これは朝鮮戦争を例にとればわかりやすい。朝鮮戦争は「現代の犠牲」を重視して、1953年に36度線で妥協して手を打った。しかし「将来の危険」は、現代に至るまで70数年間も続いている。
その一方「現代の犠牲」よりも「将来の危険」を重視した場合、戦争を中途半場に終わらせず圧倒的に打倒して、無条件降伏させてしまうことだ。第二次大戦のときに連合国がドイツにやったごとくである。そのため犠牲は増えたが、無条件降伏を勝ち得たことで、その後、米国をはじめとする連合国側とドイツとの戦争は起こっていない。
これをいまのウクライナ戦争に当てはめれば、ロシア側から見ればウクライナを完全に属国化させることで「将来の危険」を封じたい。そもそもロシアがウクライナに侵攻したのは、ウクライナの西側寄りを阻止するためだ。
しかしウクライナ側の抵抗で「現在の犠牲」が増えているところである。
現在、当初の目的であった、ウクライナのロシアへの完全属国化は、とても難しくなっている。よって戦争を終わらせるためには「将来の危険」を残してでも、どこかで妥協しなくてはならない。
ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアの侵略がはじまった「2022年2月24日以前の状態にまで戻せば」と言っているが、それだとロシアからすれば、犠牲のみでプラマイゼロ。とても妥協はできまい。
またプーチン大統領の性格からいっても、妥協をするとしても自分のメンツを保てるだけのものがなければ、終戦どころか休戦も許さないだろう。よって、この戦争はまだまだ終わりそうにないようだ。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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