偵察気球撃墜で高まる米中の緊張感
社会・2023-02-15 18:082月1日、モンタナ州上風で気球が発見された。翌2日には米政府は中国のものと分析し、3日には中国外務省も、中国のものと認め遺憾の意を表した。
4日、米軍が気球を撃墜。
10日、アラスカ州で気球を撃墜。
11日、カナダで米軍が気球を撃墜。
12日、カナダと米国の国境あたりで気球を撃墜。
と、中国からの気球を計4回撃墜している。当初、遺憾の意を表すなど、低姿勢であった中国もメンツ的に引けなくなり、当然、米中の間は険悪になってしまった。
4日に訪中予定だった米ブリンケン国務長官は訪中延期。7日、米オースティン国長官は中国の魏鳳和国防相に電話会談を申し込むも拒否された。
この気球事件で一つ気になるのは、ブリンケン国務長官の訪中延期だ。ブリンケンは習近平主席とも会談の予定があり、すでに米国の訪中団の一部は北京入りして、会談の手筈やすり合わせを整えていたのにだ。
それがぶち壊しになってしまった。
中国は、米国に対してこれまでの攻撃的な戦狼外交をやめ、融和的な外交に切り替え、米中の安定化を図っていたのに、これもぶち壊しになってしまった。
中国側にとって、気球の残骸など動かぬ証拠を残し、大きな失点であったといっていい。
おそらく気球を飛ばしたのは人民解放軍で、習近平や中国共産党上層部はそのことを知らなかったのではないか? つまり共産党と軍の意思疎通がうまくいっていないのかもしれない。
とすれば、ちょっと恐ろしいことになりかねない。
いま中国が一番恐れているのは、日本・米国・韓国・台湾・オーストラリア・ニュージーランドのNATO化だろう。
NATOは昨年6月にマドリードで開いた首脳会議で、韓国やオーストラリアとともに日本を招き、岸田首相は日本の総理大臣として初めて出席した。西のNATOと共に東のNATO化は確実に進んでいるのだ。
さらに今年の1月から2月にかけて、NATOのストルテンベルグ事務総長が日韓を訪問している。人民解放軍にとって、これまでにないくらいの緊張感であるはずだ。
例え習近平が、いま戦争を望んでいなくても、現場の人民解放軍はちょっとしたアクシデントで暴発しかねない。
一方のバイデン大統領は偵察気球の撃墜後、施政方針を示す一般教書演説で中国に対し「わが国の主権を脅かせば、米国を守るために行動する」と語った。
米中の緊張は高まるばかりだ。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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