カルト教団の宗教2世は順応か孤立と親との葛藤かの二つに一つの人生

エンタメ・2022-07-14 12:29
カルト教団の宗教2世は順応か孤立と親との葛藤かの二つに一つの人生
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安倍元総理銃撃の山上徹也は、母親が統一教会という新興宗教にハマり一家がメチャメチャになってしまったという。もし山上の母親がその宗教を信仰するということがなかったら、彼らの家族は幸せにいまでも暮らしていたかもしれない。

親が宗教にハマり、子どもが苦労するという問題を宗教2世問題という。かくいう筆者もその一人で筆者の両親が『エホバの証人』というカルト宗教を信仰し、父親はそれまで勤めていた外資系銀行を退社、母親は経営していた美容院を閉じて「奉仕活動」中心の生活となった。筆者は成人してから、何とか実家を家出同然で飛び出し、いまでは家族とはほぼ絶縁状態となっている。

しかし絶縁状態になれるのは一部だけだろう。親元を出たからといって、日本の場合、アパート一軒借りるのに連帯保証人が必要で、20代の若者にとって、不動産屋や大家が求める保証人は圧倒的に親であり、親が連帯保証人を否定すれば子どもは実家から出ることすら難しい。

また何とか家を出られたとしても、子どもを親はありとあらゆる方法で、取り戻そうとする。それはわが家庭に取り戻すのではなく、その宗教へ戻そうとするのだ。

子どもの頃は、生き残るために親の理不尽な要求を受け入れなければならない。子ども自身がどんなに「おかしいな」「いやだな」と思っていても、自分をだまして親を信じ、親の言う通りにするものだ。

それは宗教2世だけではなく、虐待児などもそうで、そういう子どもは「いい子」を演じることで、生き残ろうとする。それが大人に近づくにつれ苦しくなり、不登校やひきこもり、非行、自傷行為、あるいは精神疾患や心身症などを引き起こすことも少なくない。

また、同級生など同世代との考え方、環境があまりに違うため、友達ができにくくなったり、いじめの対象となる場合も多い。

それでも、不登校やひきこもり、非行ができる子どもは、自己主張できるだけいいのかも知れない。多くの子どもは自分をだまし、「親の言うことは正しいんだ」「親が信じているこの信仰は正しいんだ」と、自分を信じ込ませて、その教団の世界へと身を投じる。

あるいは、子どもだけうまく脱会できたとしても、親がカルト宗教信者ということで、恋愛・結婚・就職にとても大きなハンデキャップを抱えることになる。そのため宗教2世は自分の家族や宗教についてあまり話したがらない。そして孤立と孤独におちいっていくことが多い。

宗教2世の場合、親の言う通りにして順応して生きていくか、親の宗教を離れて生きていくかの選択を迫られる。親の言う通りにしていれば、自分に嘘をつくかあるいは、自ら洗脳されていけば、無自覚に教団にむしられながらもそれなりに幸せなのかもしれない。

親の宗教から決別した場合、自由とともに一般の人にはわからない孤独と一生続く親との葛藤に悩み続ける人生が待っている。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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