殺し合いは人間の本能か? 人間は本当に知的生命体なのか?
エンタメ・2022-12-25 18:57人間の歴史は戦争の歴史、つまり殺し合いの歴史である。
いまもってウクライナでは戦争が継続中なのだ。
「他の人間を殺す」というのは、どうも人間のDNAに組み込まれた本能であるらしい。
多くの人は、大昔は穏やかに平和に暮らしていただろうと思うかもしれない。
しかしそれは大間違いといえそうだ。進化生物学者のジャレ・ド・ダイアモンド氏によると、20世紀の現代国家よりも、ニューギニアやアマゾンなどの伝統社会の方が、虐殺や戦争による死者の割合がはるかに高かったそうだ。
なぜかというと、伝統社会には中央政府がなかったからだ。
中央政府は戦争をはじめることも出来るが、平和条約を結ぶこともできる。
つまり中央政府があると戦争を終わらせる機能を持っているが、伝統社会では部族同時の争いが起こると、延々と続くことになるからだ。
実際、極北のアラスカに住むイヌイットも、かつてブッシュマンと言われたサン族も、縄張り争いやグループ間の抗争で、殺し合いをはじめる。
現代社会において、戦争や虐殺を行うときに必要なのが「大義名分」である。これは多くの場合【平和のため】や【正義のため】という言葉が使われる。
かつてのヒトラーやスターリンも、現代のプーチンも自分なりの【平和のため】や【正義のため】に戦争行い虐殺を行ったのだ。
どんな平和主義者でも妻や娘に「平和のために侵攻してきた敵に犯されて来い。それは正義のためだ」とは言わない。
これは人間がまだ他の動物同様であったときから受け継いできたものだ。
そして人間が他の動物と違うところは、予想や洞察力が優れているところと、他の人間を恐れる心があるところだ。
狼の群れが他の狼の群れと出会いケンカになったとしても、せいぜい縄張りから追い払うことで戦いは終わるだろう。
しかし人間の場合はそうはいかない。復讐を恐れ、ジェノサイドをする場合もある。
殺人犯がもう死んでいる被害者を何度も刃物を突き立てるのは、もしまだ死んでなくて反撃されるのを恐れるためだ。
そこで人類は考えた。
殺されないために先に殺すか、勝てそうにない相手なら仲間と同盟を組んで、襲われないようにする。
平時のときは殺人を罪とし、有事になると敵を殺さないことを罪とした。
そして20世紀になると核兵器という大量破壊兵器を作り出し、主要な国が持つようになった。
そのおかげ(?)で、お互いに脅し合い、大国同士の戦争はなくなり、代理戦争を行うようになった。
それでも戦争はなくならない。
もし宇宙人が地球人を見たとすると「ずいぶん殺し合いが好きな星人だ。過去に学ばずとても知的生命体とはいえない」と思うのではないだろうか?
ただ、戦争も殺人も21世紀になって、少しずつ減ってきてはいる。
もし人類が本当に知的な生命体なら「平和のための戦争」や「正義のための殺人」から脱却できるはずなのだが、いまは脅し合いや制裁くらいしか方法がないらしい。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。
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