なぜ日本や中華帝国に科学革命や産業革命が起こらなかったのか

社会・2022-10-16 18:22
なぜ日本や中華帝国に科学革命や産業革命が起こらなかったのか
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日本はここ30年ほど給料が上がっていない。生産性もなかなか上がらない。なぜか? 理由や原因は多々あれど、その中の一つに日本人の優秀さと保守化がある。

どれくらい優秀か? 明治維新後急速に近代化を開始し、数十年で東洋の巨大帝国にまでのし上がった。

太平洋戦争敗戦後も、急速に経済復興を行い、1960年代終わりに世界第2位の経済大国になった。

日本から経済世界2位の地位を奪ったのは、ご存じの通り中国だ。第二次大戦後、内乱を経て社会主義体制をとっていた中国は、毛沢東という間抜けな独裁者のおかげで、決して豊かな国ではなかった。

しかし毛沢東の死後、資本主義経済を取り入れると、急速に豊かになり2010年に日本を抜いて世界2位の経済大国に躍り出た。

つまり日本人も中国人も、実に優秀だと言える。しかし日本や中国から産業革命も科学革命も生まれなかった。なぜか?

かつての中華帝国は古代、中世と世界一の経済大国であった。それが17~19世紀になると一気にイギリスなど欧州に抜かれてしまう。それは欧州に科学革命や産業革命があったからだ。

欧州でこれらの技術革新があったのは、日本なら江戸時代、中華なら清王朝の時代だ。両国とも強大な権力者が支配し、優秀な官僚が管理するシステムも安定している。こういうときに生産性を上げるために新しいことは起きにくい。つまり「現状維持」がベストで保守的になり新しいシステムを嫌う。科学革命や産業革命は起こらない。

一方、イギリスでは、王や貴族の権力が落ちることで、その他の階級が自由を手に入れ、制度を変えたり方法を変更して豊かになっていった。すると人件費もあがる。経営者は人件費を抑えるために作業を機械で行うようになる。大量に生産されたものを、新しい機械である蒸気機関車で運ぶ。産業革命である。

いまの日本は権力者こそ強くはないが、何年も給料が上がらなくても、な~んとなく安定している。IT化が進まないのも、それがなくても日本人の優秀さで何とかなってきたからだ。

キャッシュレス化がすすまないのは、外国と違ってお札の出来が優秀で偽札もなく、銀行はどこにでもあってコンビニで24時間現金の出し入れができる。いまさらキャッシュレスなどという新しいシステムは必要ないと思っている人が多いからだ。

以前、ある区議会議員に区役所の仕事について「なぜこんな昭和的システムでやっているのですか?」と聞いたことがある。すると議員先生いわく「システムを新しくすると職員の仕事がなくなっちゃうじゃないですか。うちの職員は優秀ですからいまのままで十分です」とお答えに。

こういうところでは○○革命などということは起こらない。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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