北朝鮮はなぜ今年これほどのミサイルを連射するのか

社会・2022-06-09 18:50
北朝鮮はなぜ今年これほどのミサイルを連射するのか
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今月5日、8発のミサイルを発射した。

それにしても、今年はすでに23発ものミサイルを発射している。昨年はわずかに6発であったのにだ。これまでもっとも多かったのが2019年の25発であった。まだ6月だというのにこの発射数の多さは何だろう。おそらく今年は過去最多の発射数になりそうだ。

5日の発射については、日米豪印のクアッドの首脳会談を東京で行った直後である。今回のクアッドの目的は、海洋進出をはじめた中国をいかに抑えつけるかというもので、当然中国は面白くない。

それで中国は、クアッドの開催中に中国とロシアの爆撃機を日本海から東シナ海まで仲良く飛ばし、日米豪印4か国を威嚇。この中に北朝鮮は入れてもらえていない。

北朝鮮はクアッド開催中にも3発のミサイルを発射していて「北朝鮮は中国、ロシアと仲間である」と、主張をしたかったのかもしれない。

中国にしてみれば、北朝鮮は小国ではあるが、韓国・日本・米国といった西側諸国の緩衝国になっていて、面倒くさい国ではあるが、なくては困る国でもある。

クアッドの時期に北朝鮮が頻繁にミサイルを日本海に発射したというのは、中国に「ロシアだけではなく北朝鮮もよろしくね」というメッセージであるとも考えられる。

中国とロシアは国連総会において、北朝鮮への制裁を強化する国連安全保障理事会決議案に拒否権を行使。中国・ロシア・北朝鮮は反米という意味で、そして社会主義国(ロシアは元社会主義国だが)という意味で繋がっている。

しかし反米3か国の中で、北朝鮮の立場はもっとも弱い。アメリカも怖いが中国も怖い。しかしいま頼りになるのは中国だけだ。北朝鮮の貿易の9割は中国が相手という実状もある。

また、トランプ前大統領のとき、米朝は初めて首脳会談をした2018年、ミサイルの発射はゼロだったが、いま北朝鮮はアメリカとの交渉がなく、この間に、ミサイルの発射実験をやって、軍事力を高めておきたいと思っているのだろう。アメリカが交渉を再開しないかぎり、ミサイル実験はとまらないであろう。

北朝鮮のミサイル連射は、追い詰められた犯罪者が「来るな! 来るな~!」と泣き叫びながら、拳銃を乱射して威嚇しているようにも見える。

拳銃を乱射しながら宗主国の中国や覇権国のアメリカに「俺の存在を忘れないでくれ」「俺は核を持っているんだ! 強いんだ!」と叫んでいるようにも見える。その姿は気味悪くもあり、みじめでもある。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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